表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第7話 年越しノーズ
47/61

2時間目 お受験の季節です(2)

 食事後の勉強も終わり、空も暗くなってきた夕暮れ時。

 こくりとみっちゃんは手を繋いで、二人仲良く下校していた。

 すると、そこにお狐さまがやって来た。


狐栗こくりよ、ここにおったのか」


「あ……」


 お狐さまが来ると、みっちゃんが食事中のお話を思い出して気まずそうにする。

 すると、みっちゃんの顔を見て、お狐さまがいぶかしんだ。

 二人の反応を見て、こくりはいつも通りのメリハリのない声色で話す。


「パパがみっちゃんを変態と思ってるお話をしました」


「変た……変異体の話か。狐栗や、また美都子みつこにそう言う話をしたのだな。少しは隠さんか」


「隠してと頼まれてないです」


「またそんなヘリクツを。儂は悲しいぞ」


「こくりちゃんは悪くないよ。それに、わたしだって悲しい。お狐さまにあやかしだと思われてたなんて」


「む、むう。しかしだな、美都子。学園の七不思議の最後の一つだけ、いくら調べても分からんのだ。実果みかも分からんと言っておるし、そうなると――」


「ふんっだ。わたしはこくりちゃんが信じてくれるなら、お狐さまなんてどうでもいいもん」


「むむう」


「そんな事よりこくりはお腹がきました」


 相変わらずの眠気眼な無表情でメリハリのない声色。

 しかし、その言葉にはこくりの本音が100パーセント詰まっている。


 こくりの「そんな事」呼ばわりなその言葉に、みっちゃんは何だか馬鹿らしくなり、疑われた事を気にするのをやめた。

 そして、お狐さまも疑った事を反省して、素直に「すまぬ」とみっちゃんに謝った。

 そんなこんなでこの一件は無事解決したわけだが、ここに新たな問題が迫っていた。


「こくりはすき焼きが食べたいです」


「すき焼きとな?」


「あー。こくりちゃんね、今日のお昼に食べたハンバーガーのお肉を調べて、すき焼きを知ったんだよ」


「ふむ。その食べ物はどう言うものなのだ? 寮の食堂には無いもののようだが」


「牛さんを鍋で煮る料理です」


「その例えなんか嫌」


「なるほどのお。実果にでも聞いて来るか」


「聞いて来るって、理事長先生の所に今から行くの?」


「うむ。可愛い娘の為に、そのすき焼きなるものを作るのだ」


「パパ頑張って下さい」


「では、行ってくる」


 お狐さまはそう告げると、ふよふよとモフモフ尻尾を揺らめかせ、理事長室に向かって飛んで行った。

 こくりとみっちゃんはそのまま歩いて、芍薬しゃくやく寮と学園の門へと続く別れ道で立ち止まる。


「こくりちゃん、お正月はどうするの? お狐さまと一緒に稲荷神社に帰るの?」


「はい。31日にパパと帰って、お掃除します」


「そっかあ。うーん……」


 みっちゃんは少し顔を曇らせて、しょんぼり顔。

 こくりは首を傾げて、しょんぼりなみっちゃんを見つめて、背伸びして頭をでていいこいいこする。


「どうしたんですか?」


「一緒に初詣に行きたかったの」


「おおー。行きます」


「え? でも、こくりちゃんは帰っちゃうんだよね?」


「みっちゃんも一緒に来ればいいです」


「え……?」


「こくりのお家にみっちゃんをご招待します」


「ええええええええええ!?」


 大声を上げてみっちゃんは驚き、こくりは相変わらずの眠気眼な無表情で万歳する。

 そんなこくりのその瞳は、どこか楽しそうな輝きを見せていて、カチューシャの狐耳も嬉しそうに揺れていた。


「ど、どうしよう? 新しいお洋服をお母さんに買ってもらわなきゃ」


 みっちゃんは早くも乗り気になり、ほおを両手で押さえてワクワクが隠せない。

 しょんぼり顔は最早デレデレでだらしなく、もうこくりのお家に行く事で頭の中はいっぱいだった。


 かくして、こくりのご招待を受けたみっちゃんは、ワックワクのこくりちゃんハウス訪問ツアーに参加する事になった。

 この後みっちゃんが両親を説得する為に、31日直前まで長~い時間をかけてしまったが、それはまた別のお話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ