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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第6話 静寂のドリーム
37/61

1時間目 クリスマス注意報(1)

 この世に蔓延はびこる怪奇な現象。


 人々の心から忘れ去られていく“おばけ”や“幽霊”や“妖怪”のたぐい


 それ等が詰まったこの世の不思議は、


 時が経つにつれ薄まっていく。


 だが、そんな不思議が今でも集まる場所がある。


 それが、世界に名だたる名門女子校【私立妖花(ようか)威徳(いとく)女学園】。


 幼稚舎から大学までエスカレート式に通える少女達の学び舎。


 “妖花”や“威徳”などと言う可笑しく奇怪な名の学園ではあるが、


 設立当時はこの名前が【徳女】と略されて話題となり、


 徳を積む事の出来る学園として、名家のお嬢様方からの注目を集め、


 今では名門と呼ばれる学園となった。


 しかし、時が経ち、今では若者たちから【妖女】と呼ばれ、


 その名に釣られた一部マニア達からも一目置かれた乙女の園。


 この物語は、そんな可笑しな名の学園に通う幼女『狐栗こくり』の、


 奇妙で不思議なあやかしが満載な物語である。







 季節は冬の12月中旬。

 世間はクリスマスに備えて様々なイルミネーションで着飾られ、はなやかな姿を見せている。

 そして、ここ妖女でも、そこ等中に綺麗な装飾そうしょくほどこされていた。


 妖女の幼稚舎のお部屋の一室では、クリスマスに向けて、サンタさんへのお手紙をみんなで書いている。

 幼女たちは各々とっても楽しそうにニコニコとお手紙を書いていたが、そんな中、この物語の主人公である狐火きつねび狐栗(こくり)は珍しく悩んでいた。


「こくりちゃん、そんなに難しく考えなくていいのよ? それとも、字が分からない? 先生が教えてあげようか?」


 こくりに話しかけたのは、このお部屋の担当である宗内むねない先生。


 今更ではあるが、この幼稚舎も名門である妖女の内の一つ。

 それもあり、幼女と言えどあなどるなかれ。

 この幼稚舎に通っている幼女たちは、みんなひらがな程度なら書けてしまう。

 しかし、こくりは別だった。


 こくりは理事長が推薦すいせんして入園させてもらった特待生。

 裏口入学なんて思う人もいるかもしれないが、この学園では勉強だけが評価されるわけでは無い。

 こくりの場合は、理事長の推薦はきっかけにすぎず、その俊敏しゅんびんで人並み外れた抜群の運動神経で入園を決定させている。

 そんなわけで、勉強系はてんで駄目である。


 とは言え、それはあくまで入園した当時の話。

 既に半年以上も経っていて、こくりは毎日のように勉強する努力家さん。

 ひらがなどころか、今ではカタカナも漢字も英語も書けてしまう秀才である。

 なので、先生の心配は全くの的外れで、こくりが悩んでいるのはそこでは無い。


「サンタさんの国の言葉を勉強してないからわからないです」


「……国? こくりちゃん、日本の、この国の言葉で良いんだよ~」


 宗内先生が笑顔で答えると、こくりは相変わらずの眠気眼な無表情で首を横に振った。


「そんな事無いです。ラップランドの言葉は何語ですか?」


「ラップ……? ラップの国? さ、サンタさんはそんな所にいないんじゃないかな?」


 残念な事に、宗内先生はラップランドを知らない。

 その為、音楽の方のラップを想像して、困惑しながら冷や汗を流しながら答えてしまった。


 こくりは宗内先生のそんな頓狂とんきょうな答えに首を傾げて、理解する。


「ぺたんこ先生にはもう聞かないです」


「……ええっと、こくりちゃん? 先生の事をぺたんこって言わないっでって、この前お話したよね? そんな事を言ったら駄目なんだよ?」


「スーンです」


「スーンじゃないでしょお?」


「スーンです」


 こくりは頬を膨らませてご機嫌ななめ。

 スンスン言いながら、相変わらずの眠気眼な無表情を更に無表情にしてそっぽを向く。

 そして、そっぽを向いた方向に宗内先生が何度も移動して顔を合わせて、顔を背けるこくりとの顔合わせ合戦が開始された。

 すると、そんな二人を見て、周りにいた幼女たちが楽しそうに笑って真似をする。


 スンスンこくりと、意地でも顔を合わせようとする宗内先生に、それを見て楽しそうに笑って真似をする幼女たち。

 今日も幼稚舎は平和だった。




 因みに、フィンランドにラップランドのサンタクロース村があり、こくりはその事を言っていた。

 ただ、こくりはまだ勉強不足で、フィンランドと言う国は知らない。

 その為、どこの国の言葉か分からなかった。


 尚、これはどうでもいい事だが、宗内先生の胸囲は75で大きくない。

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