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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第5話 トイレで始まるラブロマンス
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5時間目 隣り合わせのフラワーガール(3)

 旧校舎のトイレに現れたおぞましい声のおかっぱ黒マスクの幼女。

 血のように真っ赤なひもで亀甲縛りをされている寺雛井じひない先生や数樹すじゅお姉さま達。

 幼女に突然プロポーズされたみっちゃんは、大声を上げて驚き、顔を真っ赤にさせて動揺した。


「け、結婚って、そ、そんなの困るよ! 結婚は好きな人同士でするんだよ!」


「両想いだから平気よ~。アーシ花子。はなちゃんって呼んでね。結婚式はいつにする?」


「聞いてない! あれ? 何これ!?」


 いつの間にされたのか、みっちゃんの左手の小指に赤い糸が結ばれていた。

 そして、その赤い糸は花子の左手の小指のから伸びている。


「――ぴぇっ」


 みっちゃんが恐怖で小さく悲鳴を上げて、赤い糸を取ろうとするも、何故か取れない。

 しかし、その直後に、その赤い糸が青白い炎で燃えて灰になる。

 そして、みっちゃんはこくりに腕を引っ張られ、花子から離れた。


「ありがとう、こくりちゃん」


「大変です」


「う、うん。あの子、妖だよね? 早く先生たちを助け――」


「花子さんの声がガラガラです」


「――そこ!? 他に注目するところあるよね!?」


「のどアメを持って来るべきでした」


「優しい! って、そうじゃな――」


「アーシを放置してイチャイチャするな!」


 こくりとみっちゃんが漫才を繰り広げていると、花子が怒って、左手小指から出ている赤い糸を伸ばす。

 そしてそれは、みっちゃんに向かって伸びていき、掴もうとした。

 すると、みっちゃんの胸元にあるお守りが青白く光り、赤い糸が燃えた。


「これって……」


「うむ。わしのお守りがお主を護ったのだ」


「お狐さま。やっぱりそうなんだ」


「アーシとお姉さまんを結ぶ運命の赤いトイレットペーパーを二度も燃やすなんてサイテー! 絶対に許さない!」


「えええええ!? それ糸じゃなくてトイレットペーパーだったのおおおお!?」


「たかが妖ごときが儂を許さんとは、思い上がるでないぞ。のう? 狐栗こくり……狐栗? 何をしておるのだ?」


「この縛り方を調べています」


「なんで!?」


「ああなってしまっては、儂にはどうにも出来んなあ」


 流石はこくり。

 どこまでも自由である。


 こくりは亀甲縛りに興味を持ち、寺雛井先生たちの側に行ってそれを調べていた。

 そしてその瞳は見事なシイタケ。

 十字の輝きをきらめかせ、相変わらずの眠気眼な無表情もどこか楽しそう。


「あら? アンタ見る目あるじゃない」


 さっきまで敵意むき出しだった花子は、こくりの態度と言葉で落ち着いたのか、そう言うとこくりの側に行く。

 そして、花子が亀甲縛りの授業を開始し、こくりが真剣に勉強する。


 みっちゃんは冷や汗を流して見つめて、お狐さまは教育上に良くないような気にしなくても良いようなと悩み出す。

 そして数分後、ついにこくりは亀甲縛りをマスターした。


「こくり、アンタに亀甲縛り免許皆伝を進呈するわ」


「遂に師匠を超えました」


「超えてないわよ!」


 こくりと花子は亀甲縛りで仲良しになり、亀甲縛りフレンドとなった。

 しかし、残念ながら事件はまだ解決していない。

 寺雛井先生達は、まだ縛られているのだから。


 こくりが亀甲縛り免許皆伝をとると、みっちゃんが花子の側へと恐る恐る近づいた。


「ね、ねえ、はなちゃん。寺雛井先生たちを離してほしいんだけど……?」


「良いけど、条件があるわ」


「条件……?」


「そうよ。アーシって年上好きじゃん?」


「え? あ、うん?」


「だから、こうしてお姉さんたちを縛って閉じ込めてたんだけど、本当は誰でも良いってわけじゃないの」


「そ、そうなんだ?」


「それで何度も引越しして、好みのお姉さんを引っかけてたんだけどさ」


「引っかけ……って、待って? 引っ越しって、もしかして、色んなトイレに移動してたとか……?」


「そうそう。それそれ。先週までは三階のトイレにいたんだけどさ~。あそこはダメね。人が全く来ないの」


「そうだろうね……」


 みっちゃんは開かずのトイレの意味を理解した。


「学園の七不思議の一つ“開かずのトイレ”って、はなちゃんがお引越しした先のトイレなんだ……」


 そう。

 学園の七不思議の一つである“開かずのトイレ”とは、花子が引っ越して開かないトイレなのだ。

 しかも、そのトイレは旧校舎限定。

 今では旧校舎のトイレが殆ど使われていないと言うのもあり、それはただの噂として広がっていた。

 それに、接触不良で開かない扉も実際にあったので、この不思議の存在がそれに上手い事かみ合ってしまっていたのだ。


「開かずのトイレ? 何それネームセンスなくね? それより、条件なんだけ――っどおおおおお!?」


 話の途中で大声あげて驚く花子。

 その理由は、背後で燃えている亀甲縛りの赤いトイレットペーパー。


「何してんのアンタ!?」


「焼却です」


「はああああああああ!?」


 長々と花子が話している間に、こくりが燐火の炎で、寺雛井先生たちを亀甲縛りしていた赤いトイレットペーパーを燃やしていたのだ。

 しかもこの炎、妖などにしか効力が無い為か、煙が出ない。

 それもあり、花子は燃えていた事に気がつくのが遅くなったと言うわけだ。


「アンタ、恩を仇で返す気!?」


「こくりは知ってます。師匠が人道を外れてしまったら、その時は弟子が道を正すのです。この前アニメで見ました」


「わけわかんない事言って! 絶対に許さない! そいつ等はアーシの愛人よ!」


「愛人って、浮気は駄目だよ。はなちゃん」


 みっちゃんが冷や汗を流して呟くと、花子が視線を向けて目がかち合う。

 しかし、花子のその顔は怒っている顔では無く、焦って動揺するような表情。


「でも、色んなお姉さんを好きになりたいじゃん?」


「わたしはそう言うのやだなあ。そう言う事する人は嫌いだもん」


「…………しょんな」


 みっちゃんの言葉がクリティカルヒットして、花子がショックを受けて真っ白になる。

 そして、まるで砂のようにサラサラと崩れてしまった。

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