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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第5話 トイレで始まるラブロマンス
31/61

1時間目 事件はトイレで起きている(1)

 この世に蔓延はびこる怪奇な現象。


 人々の心から忘れ去られていく“おばけ”や“幽霊”や“妖怪”のたぐい


 それ等が詰まったこの世の不思議は、


 時が経つにつれ薄まっていく。


 だが、そんな不思議が今でも集まる場所がある。


 それが、世界に名だたる名門女子校【私立妖花(ようか)威徳(いとく)女学園】。


 幼稚舎から大学までエスカレート式に通える少女達の学び舎。


 “妖花”や“威徳”などと言う可笑しく奇怪な名の学園ではあるが、


 設立当時はこの名前が【徳女】と略されて話題となり、


 徳を積む事の出来る学園として、名家のお嬢様方からの注目を集め、


 今では名門と呼ばれる学園となった。


 しかし、時が経ち、今では若者たちから【妖女】と呼ばれ、


 その名に釣られた一部マニア達からも一目置かれた乙女の園。


 この物語は、そんな可笑しな名の学園に通う幼女『狐栗こくり』の、


 奇妙で不思議なあやかしが満載な物語である。







 この物語の主人公狐火(きつねび)狐栗(こくり)が住む芍薬しゃくやく寮には、打田うちだ数樹すじゅと言う名の少女が住んでいる。

 少女は中等部三年の生徒であるが、この妖女学園はエスカレート式の学園。

 高校にあたる高等部へ行く為の受験勉強はする必要があまりなく、今の成績を保てていれば、問題無く高等部への入学が可能だった。

 そんな気の緩みからか、少女は友人達とやってはならない事に手を出してしまった。


 やってはならない事、それは…………。


「「かんぱーい!」」


「ふふふ。皆さん、私の為に集まってくれてありがとう」


「いいのいいの。FPSだっけ? インターネットの大会で優勝したんでしょ? これを祝わずして、数樹の友達って言えないじゃーん」


「ええ。瑠璃るりさんのおっしゃる通りよ。数樹さんを祝うのは私達の義務だわ」


「そうそう。瑠璃さんと桜花おうかさんもこう言ってるのだし、今日はたっぷりお祝いさせてね」


「瑠璃さん、桜花さん、美海みみさん……。皆さん、本当にありがとう。嬉しいわ」


「それじゃあ気を取り直して~」


「「かんぱ~い!」」


 ここは、旧校舎のとある教室。

 時刻は21時と、それなりに遅い時間。


 すっかり空も暗くなって暫らく経つこんな時間に、FPSの大会に優勝した数樹を祝う為に、三人の友達が集まっていた。

 そんな少女たちだが、数樹を含めて全員が中等部の三年生で、全員お嬢さまである。

 しかし、瑠璃と呼ばれた少女を中心に、同学年の生徒たちからは結構有名な素行の悪いグループだ。

 と言っても、こんな時間に集まってはいるが、不良と言うわけでは無い。


 単純に他のお嬢様と比べて、少々それらしくないと言うだけの事。

 こうして今祝杯をあげてはいるが、その中身は香りの良いハーブティー。

 机に手作りのクッキーやパウンドケーキを並べて、夜遅くのお茶会を開いているだけと言うもの。


 とは言え、お嬢様たちからすれば十分な不良行為。

 夜分にお茶会など、素行の悪い以外何ものでも無い。

 この程度の事で、少々……いや。かなり大袈裟だと思うかもしれないが、世間の目は厳しいもの。

 もしバレてしまえば、他の生徒たちには不良と思われ、生徒指導室に呼ばれて先生に怒られてしまうだろう。

 だから、こうしてわざわざ人気の無い旧校舎に集まって、隠れてお祝いをしているのだ。


 さて、そんな少しこの学園の生徒として外れた四人。

 お茶会を楽しんで時間が過ぎていき、夜も深まった深夜の時間。

 グループの中心である瑠璃が、深夜のテンションで良からぬ事を考えた。


「ねえねえ。今から季節外れの肝試ししようよ」


「肝試し? 私、怖いわ」


「そうねえ。少し楽しそう。私は参加しようかしら」


「美海は不参加で、桜花は参加。数樹はどうする?」


「せっかくのお誘いだし、私も参加するわ」


「決まり!」


「まあ!? 私だけ参加しないと言う事は、ここに一人で残れと言う事なの!?」


「ふふふ。そうなるわね」


「もう! 数樹さんってば。笑い事じゃないわよ。それなら私も参加するわ!」


「全員参加決定~! それじゃあ、早速出発しましょ! まずは学園の七不思議の一つ“動く人体模型”は本当にいるのか!? 楽しくなってきた!」


「瑠璃さんは相変わらずに元気ね~」


「本当よ。はあ……。気が重いわ」


「ふふふ。美海さん、元気を出して? せっかくなのだから楽しみましょう」


 こうして、四人の少女たちは旧校舎にて、季節外れの肝試しを開始した。

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