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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第4話 残暑のメロディー
29/61

8時間目 ホラーは突然やって来る(3)

 楽しいお風呂の時間も終わり、20時にはしっかりとオヤスミするこくりとみっちゃん。

 しかし、二人のスヤスヤタイムは、深夜の24時を手前にして終了した。


「眠いです」


「ほんとにね~」


美都子みつこは寝てても良かったのだぞ?」


「今から音楽室に行くんでしょ? こくりちゃんだけを危険な目に合わせられないもん」


「こくりはつよつよなので危険じゃないです」


「うむ。狐栗こくりわしの自慢の娘じゃ」


 そんなわけで、こくり達がこの時間に起きているのは音楽室に向かう為。

 そしてその理由は、学園の七不思議の一つ“独りでに鳴るリコーダー”。

 と言うわけでは無く、みっちゃんのリコーダーべちゃべちゃ事件の真相を解き明かす為だった。


 二人と一匹は初等部の校舎に侵入して、音楽室へと向かって歩く。

 そうして辿り着いたのは良いものの、音楽室に入る事は無く、窓から中をうかがった。

 しかし、ここで一つ問題がある。


 音楽室は一階ではなく二階にあるのだ。

 そして、ここにはベランダやバルコニー的な物は無い。

 つまりどう言う事かと言うと、こくりは窓枠のわずかな隙間を手で掴み、懸垂けんすいよろしくな感じで覗いているのだ。

 しかも、みっちゃんを背負って。


「こくりちゃん、わたし重くない?」


「クマミちゃんより軽いです」


「くまみちゃん……? だれ?」


「パパの稲荷神社にたまに遊びに来ていたクマです」


「く、くま!?」


「お腹が空くと凶暴になる、とってもシャイな女の子です」


「凶暴でシャイ!? どう言う事なの!?」


「こら、美都子みつこ。静かにせんか」


「っうぅ。ごめんなさい」


 お狐さまに注意され、しょんぼりして口を閉ざすみっちゃん。

 こくりはそんなみっちゃんの顔が見えないので、音楽室の中の様子を相変わらずの眠気眼な無表情で見守っている。

 するとそんな時だ。

 音楽室で怪しげな影が現れる。


「変態です」


「ほ、ほんとだ」


に釣られたのう」


 こくりが呟き、みっちゃんが驚くと、お狐さまが目を細める。


 音楽室に現れたのは、五年生くらいの背丈の少女。

 少女は何も無い所から現れて、真っ直ぐとに釣られて歩いて行く。

 そして、の前に辿り着くと、少女はニンマリと背筋が凍る程の気味の悪い笑みを浮かべて、それを手に取った。


「今だ狐栗。突入するぞ!」


「ラジャーです」


 こくりが返事をして直ぐに窓を突きやぶ……らない。

 お利口さんのこくりは良い子なので、ちゃんと窓を開けて中に入った。

 そして、を手にした少女に指をさす。


「犯人はお前です」


 こくりは相変わらずの眠気眼な無表情でビシィッと少女に指をさし、その瞳はどこか満足気。

 それもその筈で、こくりは芍薬しゃくやく寮の寮長寺雛井(じひない)先生の部屋で、とある有名なドラマのDVDを見たからである。

 思いきり影響を受けているわけだが、それは5才児なので仕方が無い。


 こくりに指をさされた少女は驚き、既に口に含んでしまっていたをくわえながら振り向いた。

 そして、そのを見て、みっちゃんが顔を青ざめさせて指をさす。


「あああああああ!! わたしのリコーダー!」


 と、言うわけで、の正体はみっちゃんのリコーダー。

 お狐さまがみっちゃんに借りて、音楽室に仕掛けた犯人をおびき寄せる為のトラップだったのだ。

 こうしてお狐さまのトラップは見事に成功して、犯人の少女は驚愕きょうがくした表情でファーとマヌケに音を出す。

 しかし、その代償は大きかった。


「やあああああああああああ!!」


 みっちゃんが指をさして叫ぶと、謎の少女はリコーダーから口を離し、そこにべっちゃりとついたよだれ。

 それを見て、みっちゃんは更に悲鳴を上げて顔面蒼白の白目になり、その場で泡を吹いて倒れた。


「馬鹿な! 美都子には儂の神力が宿ったお守りがあるのだぞ!? 奴は何をしたのだ!?」


「お狐さまのせいだよ!」


「おおー。生き返ったです」

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