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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第4話 残暑のメロディー
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7時間目 ホラーは突然やって来る(2)

 淑女しゅくじょたるもの、決してみだりに人前で肌をさらけ出してはならない。

 と言うのが、この幼女学園に通うお嬢さま方や先生たちの考えである。


 しかし、それはここ共有スペースの一つである大浴場では別の話。

 湯船にタオルを持ち込むべからず。

 肌をさらけ出し、湯で体を清めて入るべし。

 それがここのルールだ。


 と、言うわけで、浴場にやって来たこくり一行。

 もちろんルールに従って肌をさらけ出し、一応手には体を洗う為のタオル。

 しかし、こくりは違う。


 こくりは狐耳のカチューシャを頭につけ、手に持つのはタオルではなくプカプカ浮かぶアヒルさん。

 前を隠さないどころか、背後にデデーンと効果音がついてそうな仁王立ち。

 とは言え、こくりはまだ5才児。

 こんなものだろう。


 実際こくりと歳があまり変わらないみっちゃんも、ここではこくりと同じように肌をまったく隠していない。

 ここは風呂場なので、恥じらいなんて全く無かった。


「こくりちゃん、体の洗いっこしようよ。はい、洗う用のタオル」


 みっちゃんがタオルを差し出すと、こくりは首を振る。


「いりません。こくりはおて手で洗う派です」


「お、おて手……? こくりちゃんって、体洗う時に手で洗うの?」


「はい」


 こくりが頷き、みっちゃんが困惑しながら驚いて目を点にする。

 すると、側にいたFPSお姉さまこと“すじゅお姉さま”が微笑んだ。


「こくりさんは肌を傷めない為にそうしているのではなくて?」


「肌を傷めないため……?」


「正解です。タオルでゴシゴシすると、体の皮膚ひふが削れるのです」


「ええー? ほんとにー?」


「ホントです」


「ふふふ。やっぱり物知りね。みつこさん、こくりさんの言ってる事は本当なのよ。体を洗うのは、洗剤を付けた手で十分綺麗に汚れを落とせるの。むしろ、ボディタオル等でゴシゴシ洗うと、逆に皮膚まで削ってしまうのよ」


「ええええええ!? そ、そうだったんだ……」


「そうねえ……。ほら、顔は洗剤をつけたタオルで洗わないでしょう? それと同じで、タオルなんていらないのよ」


「あっ。ほんとだ。確かにそうかも」


「でも、流石に背中は手が届かない所もあるし、私もタオルを使うのだけどね」


「そっかあ。わたし全然知らなかったです」


 すじゅお姉さまの説明で納得して、みっちゃんは少し間を置いてハッとなる。


「もしかして、お風呂から上がった後もゴシゴシしちゃダメなんですか?」


「ええ、もちろん。水分を拭き取るのに一番良いのは当て拭きね。タオルを当てるだけで、十分水分は拭き取れるもの」


「おおー。勉強になります」


「こくりも簀巻すまき拭きです」


「へえ……すま? え?」


「簀巻き拭きです」


「すまきって何?」


「後で見せてあげます」


「う、うん。ありがとう」


 困惑するみっちゃんと、クスクスと笑うすじゅお姉さま。

 こくりは両手を上げて寝転がり、洗い場までゴロゴロと転がって行った。

 そして、体を洗う時がきた。


 この時、みっちゃんは緊張していた。

 何故なら、こくりの背中を手で洗わなければいけないからだ。


 こくりにタオルはNG。

 そうなれば、手で洗うしかない。


 普段から誰かにスキンシップで自分から触れるなんて滅多にしないのに、こくりの背中に直接触れて洗うなんて、みっちゃんにはハードルが高かった。

 みっちゃんはごくりと唾を飲み込んで、手にたっぷりの泡を作り出す。

 そして、こくりの背中に触れて、ゴシゴシでは無く撫でるように洗い始めた。


 この時のみっちゃんは無心だった。

 何だかいけない事をしているような気分を味わい、6才児とは思えない程の緊張感を味わっていた。

 しかし、洗われているこくりの気分は上昇していた。

 誰かに背中を洗われると言う初体験に、楽しくして仕方が無いのだ。


 みっちゃんが背中を無事に洗い終えると、今度はこくりが背中を洗う番。

 こくりはみっちゃんとは違い緊張する事無く、楽しそうに背中を洗う。

 すると、それを見ていたすじゅお姉さまが微笑ましいと笑みを浮かべて、二人を温かく見守った。




 楽しいお風呂の時間も終わり、ゆっくりと湯船にかったこくり達。

 脱衣所に戻って来て、こくりが見せた簀巻き拭き。

 それは、大きなタオルで自信をグルグルと巻いて、簀巻きにすると言ったものだった。


 まさに見た目そのまんまなものだったが、みっちゃんは簀巻き自体を知らなかった為に、かなりの驚きを見せた。

 そして、すじゅお姉さまは簀巻きになったこくりと、驚くみっちゃんを見て、クスクスと笑うのだった。

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