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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第3話 真夏の全裸大事件
18/61

4時間目 深夜のドキドキ初体験(1)

 美術部で人体デッサンのモデルを頼まれた日の夜。

 時刻はまだ消灯時間に満たない20時頃。

 こくりの住む芍薬しゃくやく寮の596号室には、昼間と同じ格好をしたみっちゃんの姿があった。


「食堂のご飯美味しかったね」


「はい。今日は日替わり定食のサンマが美味しかったです」


「こくりちゃんってば骨もかじってたもんね。っあ。それでね、こくりちゃん。何時ごろに旧校舎に向かうの?」


「深夜と言っていたので、深夜っぽい時間に行きます」


「っぽいって何時……?」


 相変わらずの眠気眼な無表情のこくりは、みっちゃんの疑問が聞こえなかったのか、時間を答えずに園児バッグを手に取ってゴソゴソと何かを始めた。

 みっちゃんはそれを見て、冷や汗を流して「まあ、いっか」と様子を見る。


 と、言うわけで、みっちゃんはこくりと一緒にあやかしを見に行くつもりだった。

 実は、昼間に美術室を飛び出したのは、親に外泊して良いかの許可を貰いに行く為。

 こくりがお狐さまがいなくても、深夜の校舎に行くと言っていたので、居ても立っても居られなくなったのだ。

 しかし、外泊許可を得るには時間がかかった。


 親の説得から始まり、寮での一泊許可証を得る為に、美術室に戻って寺雛井じひない先生に相談。

 最後に初等部の校長と理事長の許可を貰って、全部で数時間ほどかかっていた。

 だけど、その成果もあって、こくりの部屋でお泊りが出来るようになったのだ。

 尚、こくりはその間に早めのお風呂を済ませていたので、一緒にお風呂タイムは出来なかった。


 因みに、寺雛井先生に貸出し用の布団を持って来ると言われたが、ベッドが大きいので二人で一緒に寝ると言って断った。

 そんなわけで、その大きなベッドにみっちゃんが座っていると、ゴソゴソしていたこくりが何かを取り出した。


「これをあげます」


「おまもり……?」


「パパのお守りです。変態から護ってくれます」


 こくりが園児バッグをあさって取り出したのは、そこ等辺の神社に売ってるのと変わらない見た目のお守りだった。

 しかし、このお守り、パッと見は一緒だが全然違う。


 まず、普通は何のお守りか書かれているが、これには書かれていない。

 とは言え、それは正直気にする様な事では無い。

 このお守りの凄いところは、中に入ってるものが神様であるお狐さまのひげが入っている事。

 この髭には神力が宿っていて、そん所そこ等の悪い妖では近づく事すら出来ないのだ。

 因みに、リアルな変態には無力である。


「え? わたしが貰っちゃって良いの?」


「はい。中にパパの抜け毛が入ってます。みっちゃんは普通の人なので、それで身を護った方がいいです」


「ぬ、抜け毛……? ありがとう」


 こくりの言い方が若干気にはなったが、みっちゃんはお礼を言って、お守りを受け取った。

 そして、みっちゃんがお守りを受け取ると、こくりは相変わらずの眠気眼な無表情の瞳を真剣にする。


「変態は妖力が強くて普通の人にも見えるって、パパが言ってました」


「そっか。だから、わたしにもグマ子が見えたんだ」


「はい。見える変態はさわってきます。もし見つけたら逃げるが勝ちです」


「う、うん。全力で逃げるね」


 言葉だけ聞くと、変質者に出会った時にどうすれば良いかの説明にも聞こえるこくりの言葉。


 みっちゃんが冷や汗を流して頷くと、こくりが手を取って繋ぐ。

 突然の事にみっちゃんが驚くと、こくりはそのまま自分もベッドに上った。

 そして、二人は見つめ合い、こくりはみっちゃんに顔を近づける。


「よい子は寝る時間です」


「え?」


 みっちゃんは頭にクエスチョンマークを浮かばせて、そして――


「おやすみなさい」


「あ、うん。おやすみ」


 ――こくりは寝た。


「まだ早いよ! 夜って言ってもまだ8時だよ!?」


 スヤァ……。


 みっちゃんの渾身のツッコミは、残念ながら不発に終わってしまった。

 こくりは既にぐっすりと眠っていて、気持ち良さそうな寝顔である。


「えええ…………」


 みっちゃんは冷や汗を流して、やる事も無いので、そのままこくりの隣で横になる。

 そして、みっちゃんは思った。


(こんなに早い時間じゃ眠れないよお)

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