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妖女学園のこくりちゃん  作者: こんぐま
第2話 きぬつたクリーニングへようこそ
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8時間目 妖退治出張サービス(5)

 絹蔦きぬつた家で晩御飯をご馳走になり、お腹がいっぱいになったこくりは、みっちゃんの部屋で別腹のデザートを食べながらお狐さまの話を聞いていた。

 その話の内容は、もちろんこの家の中から感じる“あやかし”の気配の事。

 と言うわけで、お狐さまの話はこうだ。


 クリーニング済みの服から妖が放つ独特の妖気を感じて、取りに来たお客さんの後を尾行した。

 だけど、妖は全く姿を現さず、服には呪いがかかっていた。

 恐らくそれが、数日後に同じみが出る原因だから、それをはらっておいた。

 そして、今のところは他には妖気を感じる物は無い。


 お狐さまが姿を現して説明すると、こくりは深く考え込み、そして、頷く。


「事件解決です」


「え? そうなの?」


「妖の気配をまだ感じるから解決はしておらんな」


「そう言えばそうです」


「……こくりちゃん、適当な事言わないでよ」


「こくりはいつも真剣です。適当じゃないです」


「あはは……。あ、そうだ。その気配? は、どこからきてるか分からないの? 例えば隣の部屋とかお風呂場とか」


「う~む。それが妙でのう。本来なら分かるのだが、何故か分からんのだ」


「こくりは分かります」


「うむ。いったいどこに隠れておるのやら……」


「え? 今こくりちゃん分かるって言ったよ?」


「――っ何!? それは本当か狐栗こくり!」


「まさかの聞いてない!」


「まあ、そう細かい事は気にするでない。それで狐栗や。なぜ今まで黙っておった?」


「場を盛り上げようと思って、もったいぶりました。こくりはスーパーエンターテイナーです」


「流石は狐栗。儂の娘だけある」


「盛り上げなくていいよ! お狐さまの変な所で感心しないで下さい!」


 相変わらずの眠気眼な無表情でメリハリのない声色で話すマイペースこくりと、親ばかのお狐さま。

 そんな二人に振り回され、みっちゃんがツッコミて爽やかな汗を流し、息を切らす。

 すると、こくりがみっちゃんにミルクティーを差し出した。


「こくりのミルクティーをあげます。これを飲んで落ち着いて下さい」


「へ? あ、うん。ありがとう」


 みっちゃんはミルクティーを受け取り、一口飲んで落ち着いた。


「それで狐栗よ。妖は何処にいるのじゃ?」


「てんぷらの巣です。てんぷらの臭いと妖の臭いが混ざってて、それでパパは気づかなかったです」


「え? それって混ざるものなの……? なんかやだ」


「なるほど。どうりで分からなかった筈よ。あのたぬきめは狐栗のハートを儂から奪おうとしたライバル。儂の目をあざむく為に、妖がまさか狸を利用するとは」


「お狐さまが勝手にライバル視して、勝手にけていただけじゃ……?」


美都子みつこよ、そうでは無い。儂はあんな可愛いだけの狸など、ちっとも気にしておらん」


「さっき自分からこくりちゃんのハートを奪うライバ――」


「さあ、行くぞ狐栗! 狸に引導を渡してやるのだ!」


「えええ!? 引導を渡すのは妖だよね!? てんぷらに酷い事しないで! こくりちゃん、止めて!」


「てんぷらって聞いてたら、天ぷらを食べたくなってきました」


「今ご飯とデザート食べたばかりなのに!?」


 お狐さまがてんぷらに逆恨みして部屋を飛び出し、その後をこくりとみっちゃんが追いかける。

 そして、ついに妖が潜む所までやって来た。

 しかし、そこで見たのは――


「クューン」


「てんぷらちゃん、聞いて? 今日も頑張ってお洋服に呪いをかけたの。これでこのお店がまた繁盛はんじょうするわ」


「あ、アライグマが喋ってるううう!?」


 ――まさかの喋るアライグマ。

 二本の前足を器用に動かして、怯えるてんぷらにハアハアしながら、ベタベタ触るアライグマの姿だった。


「クューン。クューン」


 駆けつけたみっちゃんの声を聞き、てんぷらが鳴きながら逃げ出す。

 そして、てんぷらがみっちゃんに飛びつくと、アライグマの目が鋭くなり、その目でみっちゃんを威嚇いかくした。


「何よアンタ!? アタシのてんぷらちゃんを誘惑しないでよ!」


「ゆ、ゆうわく……?」


「そうか。ようやく理解したぞ」


 みっちゃんが困惑していると、不意にお狐さまが声を上げた。

 そして、真剣な面持ちをてんぷらとみっちゃんに向けてから頷いた。


「その狸から妖の気配を感じたから、狐栗は最初に捕まえたのだ。謎は解決した」


「今はどうでもいいよ!」


「違います。てんぷらが美味しそうだったから捕まえました」


「わたしはそうだと思ってたよ! でも、もう一度言っておくけど食べないでね!?」


「アンタ達! アタシを無視して、てんぷらちゃんを取り合うなあ!」


「そんな事してない!」


「クューン」


 遂に始まった妖とのバトル。

 果たして、てんぷらは生き残れるのか!?

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