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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百九十七 美嘉編 「開会」

沙奈子たちが教室に向かって少ししてから、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんが来た。


相変わらず結人くんは不愛想で挨拶もなくそのまま教室に向かう。


「もう…、結人ったら、こんな日まで」


鷲崎さんは呆れたように言ったけど、その表情はどこか穏やかなそれだったと思う。彼が攻撃的な目で睨み付けたりしなくなっただけでも、大きな『成長』だからだろうな。


その後、山仁やまひとさんも来て僕たちの隣に座り、いよいよ卒業式が始まる時刻になった。


「卒業生の入場です。拍手でもってお出迎えください」


そのアナウンスに続いて、卒業生たちが入ってきた。


カメラを構えてた保護者の人たちも、カメラを手にしたまま拍手する。


僕たちももちろん、拍手で迎える。


神妙な面持ちで入場してくる卒業生たちの中に、結人くんが、沙奈子が、千早ちはやちゃんが、大希ひろきくんがいた。


もっとも、結人くんと沙奈子と大希くんは割といつも通りな感じだったかな。


むしろ千早ちゃんが、さっきまでの『清々した』って言いたげな様子とは裏腹に緊張した表情をしてた気がする。


そんな三人の姿を、僕もスマホのカメラで捉えていた。


運動会の時にはプロのカメラマンに依頼して写真を撮ってもらってた星谷ひかりたにさんだけど、さすがに卒業式には無理だったそうで、自分でデジタルカメラを構えて撮ってた。


「もっときれいな写真で残したかったのですが、残念です」


とは言ってたかな。


そして卒業生が席に着き、卒業式が始まった。


「一同、起立。国歌斉唱。ピアノの伴奏の後に続けて斉唱願います」


そう言われて、ふと記憶がよみがえってきた。卒業式の内容はほとんど忘れてるのに、ただもう適当に口だけ動かしてたってことだけは思い出してしまった僕だけど、今日は、決して大きな声じゃないけど、自然とそれなりに歌えてしまった。


かと言って、特に感慨があるわけじゃない。ただ、せっかくの沙奈子の節目の日にあまりいい加減なことはしたくなかったって感じかな。


星谷さんはさすがにピシッと背筋を伸ばしてすごくきれいな姿勢でしっかりと歌ってた。


こういうところもさすがだなって気がする。


でもさすがに、校歌斉唱の時は、彼女の出身校ってわけじゃないのもあってか、渡されたパンフレットに書かれた歌詞を見ながら、かろうじて合わせる感じで歌ってたけど。


鷲崎さんは、細かいことは気にしない彼女らしく、結構大きな声で歌ってたな。


国歌と校歌の斉唱も終わり、


「着席」


のアナウンスでみんなまた席に着く。


それから厳かな雰囲気の中、卒業証書授与へと進んでいったのだった。



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