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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百九十三 美嘉編 「何かしでかすようなら」

三月十八日。月曜日。晴れ。




玲那が、自分の起こした事件について全面的に自分の罪を認めたのは、


『理由があるからって何をしてもいいわけじゃない』


って思ってたからだ。


秋嶋あきしまさんは、そんな玲那の姿から、何も学ばなかったのかな……。


だとしたら、玲那にとって彼は、そして彼にとって玲那は、互いを高め合うことのできるような存在じゃないってことだと思う。


だったらやっぱり、関わらない方がお互いのためだと思うんだ。


彼が、自分の好きなアニメに自分の人生を賭ける邪魔をしたくもないし。


沙奈子や玲那のことも諦めたくないけど、自分が好きなアニメを絶賛しないのも許さない、自分の気に入らないアニメを批判しないのも許さない、なんて、ムシのいい話は通用しないよ。


世の中はそんなに甘くない。だから玲那は有罪判決を受けた。


その意味を、秋嶋さんは理解してなかったんだろうな。


理解してたら、今回のようなことはなかったはずだから。


判決後に玲那が出したメッセージも、彼には届いてなかったんだな……。


もちろん、あれだけでみんなの意識が変わるとか世の中が変わるとか思ってたわけじゃない。ただ、身近な人にさえ届いていなかったのが悲しいだけだ。


彼にとって玲那は、自分のアニメ趣味を理解してくれるだけの都合のいい女性だったってことか……。


玲那自身が彼のことをどう見ていたのかはよく分からない。


ただのアニメ仲間なのか、友達なのか、多少なりとも異性として意識してたのか。


たぶん、玲那自身にも自分の気持ちがよく分かってないんだろうなって気もする。


あの子にはまだ、恋愛感情みたいなもの自体がよく分からないんだろうし。


もっとも、僕もその辺はいまだによく分かってないから偉そうに言えないけどね。


絵里奈のことが好きで、彼女となら気持ちが昂ることはあるけど、果たしてそれが恋愛感情なのか?って言われたら自信がない。


『恋愛ってなんだろう?』


っていうのが今でも正直な気持ち。


だから、もし、玲那が恋愛感情が伴わない形で秋嶋さんを好きだったとしても、別に変だとは思わない。


けれどそれももう、無駄になるのかな……。


このまま秋嶋さんとの繋がりが切れてしまったら……。


でも、少なくとも今の秋嶋さんには玲那は任せられない。それどころか、もしストーカーみたいなことになったらそれこそ永久に縁を切りたいとさえ思う。


僕は玲那を守る。


そのためにだったら星谷ひかりたにさんのことだって利用する。


仕事が終わって沙奈子を迎えに行った時、改めて星谷さんにお願いした。


「秋嶋さんがもし、何かしでかすようなら、その時には協力お願いします」


と、改めて頭を下げたんだ。



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