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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百九十二 美嘉編 「自分の行為については」

三月十七日。日曜日。曇り時々雨。




今回のことで僕は改めて、


『自分は正しい』


『自分は絶対に間違ってない』


って思い込むことの怖さを教えられた気がする。


『自分は正しいことをしてるんだから何をやってもいい。何を言ってもいい』


って考えることで、悪意なく人を傷付けられるようになるんだということを。


正しければ何をしてもいいの?。


誰かを泣かせても苦しめても。


秋嶋あきしまさんが好きだというアニメに入れ込まないことは、興味を持たないことは、『悪』なの?。


そのアニメを全面的に称賛して、秋嶋さんが許せないという思ってるアニメを全面的に批判しないのは、『悪』だって言うの?。


だったら僕は『悪』でいい。沙奈子を泣かせて玲那を苦しめるような行為を認めるのが『正義』なら、『正しさ』なら、僕は悪人で構わない。


何のためにそんなに真剣にアニメを見てるのか、僕にはまったく分からないし、理解したいとも思わない。


分かったのは、秋嶋さんが沙奈子や玲那を『好きだ』『守りたい』と言ってたのは結局、上辺だけの口先だけだったってことかな。


たぶん、僕がこんな風に考えてることさえ、秋嶋さんにとっては『悪』なんだろう。


僕は別に、面と向かって彼を罵るつもりはない。ただ彼の拘りとかが理解できなくて、沙奈子を泣かせ玲那を悲しませてるのが許せないだけだ。


たとえそれを口に出さなくても、彼にとっては『裏切り』で、『悪』なんだろうな。


けれど、僕は決して聖人じゃないし、博愛主義者でもない。


秋嶋さんが好きだというアニメのキャラクターたちがどんなに素晴らしい存在だったとしても、僕にとってはただの『架空の存在』でしかない。


僕は、生身の人間と空想上のキャラクターのどちらを優先するかと言われたら間違いなく生身の人間を取る。僕にとって大切なのは沙奈子や玲那であって、見たこともないアニメのキャラクターじゃないんだ。


生身の人間よりアニメのキャラクターを大切だと思うような人には、僕の大切な人達は任せられない。


もし、秋嶋さんがそういう人だったら、もう、沙奈子はもちろん、玲那とも関わって欲しくない。


正直、今はそれくらいの気分だよ。


そして沙奈子や玲那に何か危害でも加えようとかしたら、即、刑事告訴する。それで彼の将来がどうなっても、もう関係ない。


僕は秋嶋さんのことを、信用しきれてはなかったけど、別に対立するつもりはなかった。


だけど彼は、玲那を『裏切り者』と呼んで、沙奈子を泣かせた。


その自分の行為については責任を持ってもらわなくちゃと思う。


他人を罵るんだったら、せめてその程度の覚悟は持ってもらわなきゃって思うんだ。


『たかがアニメでそんな大袈裟な』


って?。


それを言うなら、その『たかがアニメ』のために他人を罵るのは何なんだよ。



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