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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百八十八 美嘉編 「生身の人間ってもっとこう」

三月十二日。火曜日。晴れ。




今日も進展なし。いつまでも気にしてても始まらないから、もう終わったこととしてスルーすることにした。


「すいません。喜緑きみどりさんと佐久瀬さくらいさんと嶋郷しまごうさんと本庄ほんじょうさんは、『ごめんなさい』って言ってくれてるんですけど……」


夕食の時、鷲崎わしざきさんが申し訳なさそうにそう言ってくれた。


『ごめんなさい』と言ってくれてるとはいえ、それを沙奈子本人にじゃなく鷲崎さんを通じてっていうのがやっぱり不信感しかなかった。


それでも、そう思ってくれてるだけでもまだいいのかな。直接お詫びに来られないっていうのも、僕も同じ立場だったらとは思うし。


玲那も、


「とっくんたちは私にも謝ってくれたよ」


と言ってた。だけど……。


「だけど、あっきーは……。なんで自分が責められるのか分かってないみたい……。


これはもう、アニメがどうこうっていう話じゃなくて、人としてどうなの?っていう話になってることも分からないのかもね……。


自分はアニメの将来のことについて真剣に考えてるからこそ意見を述べてて、そんな自分を責める奴こそが間違ってるって思い込んじゃってるんだろうな……」


って、俯いたままで言ってた。


「アニメの将来、ねえ……。私は正直、アニメに対してはそこまで思い入れないからピンとこないな。


喜緑さんがアニメを好きだっていうのは理解したいけど、秋嶋さんがそこまで入れ込む気持ちは理解できない」


鷲崎さんは茶碗と箸を手に、苦笑いを浮かべる。でもスッと僕の方を見て言ったんだ。


「喜緑さんは、『鷲崎さんのためだったらアニメだって控えます』とまで言ってくれてるんです。


私としては別にそこまでしてもらおうとは思ってませんけど、でも真剣に考えてくれてるんだっていうのは分かります。結人のことも分かろうとしてくれてるんですよね。


アニメのキャラクターと生身の人間は違います。アニメのキャラクターは、自分にとって理想的な人だったりしますけど、それって結局、アニメの演出として見えてる部分だけの話なんですよね。生身の人間ってもっとこうドロドロしてて、嫌な部分だってあるんです。


私だって、昔は、先輩の気持ちとか考えもしないで自分の気持ちばかり押し付けてました。今から思うと本当に何やってんだろって感じですよ。


話を聞いてたら、秋嶋さんの好きなアニメのキャラクターたちはすっごく優しくて思い遣りがあってあたたかい関係を築いてたそうですね。


なるほどそういうのって理想的だと思います。現実もそうだったらと思います。だけどそうじゃないんですよね。現実って」



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