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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百八十七 美嘉編 「見事に自分に」

三月十一日。月曜日。曇り時々雨。しかも風が強い。




『それで何かいい方向に向かうとでも思ってるのかな』


玲那の言ったことは、僕にも分かる気がした。


そういうことで誰かを罵ってる人って、自分が罵られたら励みになるの?。


罵られたら『なにくそ!』って思って逆に頑張れる人もいるのかもしれないけど、自分がそうだからって他人も同じだと思ってるの?。


自分ができることは他人もできて当然だと思ってる人は、僕が沙奈子に対してしてるのと同じことができるの?。


僕が結人ゆうとくんに対してした接し方と、同じことができるの?。彼を罵ったりせずに、怒鳴ったりせずに、彼の変化を注意深く見守るってことができるの?。


もし『できる』って言うのなら、それでどうして他人を罵ったりするの?。


自分は『視聴者』だから?。『お客』だから?。お客だから何を言ってもいいと思ってるの?。


僕はそうは思わない。


だって、僕が今勤めてる会社は、出版社とか場合によってはテレビ局とかからも仕事が入ったりする。


つまり、玲那がもし、出版社とかテレビ局とかを罵ったりしたら、それは僕の『お客』を罵ってることになるんだ。


そう。自分がお客の立場で罵ってた相手が、いつ、どこで、自分にとっての『お客』になるか分からない。


そうして自分が罵った相手がお客として現れた時に何かその相手にとって気に入らないことをしただけで罵られて、それで納得できるの?。


もし、僕の言ってることを『説教臭い』と感じるなら、そういう人は、何か相手に言われただけでイラっと来るタイプの人だよね?。


結局、そういうことなんだろうな。


他人を罵ってる人は、自分のことを客観的に見られないんだと思う。


だから他人を罵れるんだ。


秋嶋あきしまさんたちを見てても分かる。自分たちの姿が沙奈子や玲那からはどう見えてるか、分かってない。だからあんな風に罵り合ったりできる。


それに、自分があんな風に罵った相手が、いつか自分の勤め先にお客として現れるかもしれないということも考えてないよね。


秋嶋さんは、自分が罵ったアニメの関係者が、将来、自分の前にお客として現れたら、どんな顔して応対するつもりなんだろうな。


いずれ社会人になるならそういうことも考えなきゃいけなくなると思うんだけど、考えられてるんだろうか。


その時その時の自分の気分だけで相手を罵ってたらダメなんだってことを知らなきゃいけないのに。


他人を罵ってたら、それはいずれ自分に返ってくるんだよ。実際、秋嶋さんたちは沙奈子を泣かせて鷲崎わしざきさんに叱られた。見事に自分に返ってきた。


だから僕は、改めて沙奈子にはそうなってほしくないと思ったんだ。



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