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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百八十六 美嘉編 「アニメを楽しんでたいだけなのに」

三月九日。土曜日。晴れ。




秋嶋あきしまさんや喜緑きみどりさんの件は、やっぱりこれと言って進展を見せない様子だった。


今回のことで、沙奈子がどうして結人ゆうとくんのことは受け入れても、秋嶋さんたちに対しては懐こうとしなかったのかその理由が分かってしまった気がする。


……ううん。本当はずっと以前から察してたんだけど、なるべく考えないようにしてたことなんだ。


秋嶋さんたちは、実際には、


『沙奈子ちゃんを守ってあげたい』


じゃなくて、


『沙奈子ちゃんをを守ってあげたいと思ってる自分が可愛い』


だけなんだろうな。って……。


もちろん、悪い人たちじゃないのは分かってる。根は真面目ないい人たちだっていうのも分かってるし、『アニメ好きの人達はこれだから駄目だ』なんて言うつもりもない。


だけど、沙奈子を任せられるほど信頼できるかって言ったらその答えは間違いなく『No』だ。


秋嶋さんだけじゃなく、秋嶋さんと罵り合ってた喜緑さんたちも、ね。


鷲崎わしざきさんや木咲きざきさんはもう大人だから、本人が喜緑さんや佐久瀬さくらいさんとお付き合いを続けるって言うんなら僕が口出しすることじゃないと思う。ただ、不安は残るかな。


そして玲那がもしこれで秋嶋さんたちとの交流をやめると判断しても、僕はむしろホッとしてしまうと思う。


他人を罵ったりする人って、周囲からはそういう目で見られてるんだってすごく感じる。


もしそれで、


『他人は冷たい』


とか、


『自分の内面を見てくれない』


とか考えてるんだったら、そんなの当然だよね、としか思わない。


だって、いつ、どんな理由で自分にその攻撃性を向けてくるか分かったものじゃないし。


現に、あれほど、


『玲那さんのことも守りたい!』


って言ってた秋嶋さんが、自分の気に入らないアニメを擁護したっていうだけで、


『裏切り者!』


と玲那を罵ったんだから。


こんな分かりやすい証拠もないよね。






三月十日。日曜日。雨。



昨日、絵里奈と玲那に会いに行った時も、玲那は少し元気がない感じだった。秋嶋さんたちのことが気になってるんだろうな。


おかげで、せっかくいつもの人形ギャラリーに来たのに、絵里奈と沙奈子も人形どころじゃなかったみたいで、一緒に喫茶スペースに集まっていた。


「なんでこんなことになるんだろ……。私はただアニメを楽しんでたいだけなのに……。


確かに納得いかない出来のアニメだってあるよ?。そういうのを見たらイラっとすることもある。だけど、だからって罵ってどうすんだよ……。


それで何かいい方向に向かうとでも思ってるのかな……」



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