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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百八十三 美嘉編 「親が教えるべき」

三月四日。月曜日。雨。




『大学生にもなって何やってんだよ。このクソが……!』


沙奈子を泣かせた秋嶋さんたちに対して、千早ちはやちゃんはそう吐き捨てるように言った。


そんな千早ちゃんに星谷ひかりたにさんは、


『人間は『クソ』ではありません。クソ呼ばわりするというのは、それは人間を人間として見做さないという意味になります。私はあなたが人を人として扱わないという行為について看過することはできません』


と諭した。すると千早ちゃんは、バツが悪そうに頭を掻きながら、


「ごめん……」


って……。


大好きな星谷さんに悲しそうな表情をさせてしまったことが申し訳なかったんだろうな。そう思えるようになったことが、千早ちゃんの大きな成長だって気がする。


そして僕も、星谷さんの言葉にすごく共感できる。


彼女は言ってた。


「私は、子供が何か好ましくない振る舞いをした時には、その場で何が良くないのかというのを諭す必要があると学びました。後で問題になってから指導したのでは、自分の振る舞いのどこが良くなかったのか、記憶も曖昧になることから実感に乏しくなるのだと思われます。


実際、千早が通う小学校では、必ず、その場その場で指導を行うそうです。『たかが子供のケンカ』と侮ることなく、放っておくのではなく、その場で何が良くないことだったのかを諭すのだと聞きました。


特に、生徒同士が感情的になっているような場面では。


感情的になっているということは、相手のそれを強く逆撫でするような言動があったはずです。それは決して好ましいことではなく、故に、自らの言動の何が好ましくなかったのか、どうして拗れてしまったのかを知る絶好の機会として指導を行うのだそうです。


当初、千早はそれに大変反発し、教師に対して暴言を吐いたこともあると、個人懇談の際に聞かされもしました。


しかし、当時の担任教師は、大変に根気強く、諦めることなく指導を行ってくださったそうです。


それらがあってこそ、今の千早があるのだと思います。


私も彼女に自らの振る舞いが結果として自身を貶めるのだと知っていただきたく努力も重ねましたが、やはり私自身がまだまだ未熟であるため、至らぬ点もたくさんあったことでしょう。それでも今の千早になれたのは、私が彼女に知り合う以前から、小石を積み上げて石垣を築くような、先生方のたゆまぬ努力が礎となってくださったのだと思うのです。


私は、単に、そのフォローをしたに過ぎない」


と。


さらに、


「ですが、それを学校にしていただいたというのが、私は非常に残念なのです。本来であれば学校はあくまで『学びの場』ですので、そのようなことは教師の役目ではないと思っています。


何十人もの生徒を一度に受け持ち、教鞭をとり、その上で本来であれば親が教えるべき『人としての在り方』についてまで教え諭すというのは、負担が大きすぎるのではないでしょうか」


とも。


この星谷さんが言ってたことも、僕は参考にさせてもらってるんだ。



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