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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百八十二 美嘉編 「人間を人間として見做さない」

三月二日。土曜日。晴れ。




結人ゆうとくんの時は、彼がまだ子供だったし、何より沙奈子がショックを受けてなかったから、冷静に対応できた。


だけど今回は、沙奈子自身が泣いてしまうくらいにショックを受けてたことに僕も動揺してしまったんだろうと思う。


玲那が怒ってたのもそれだ。あの子は、自分のことではまず怒らない。秋嶋あきしまさんたちが、自分たちの主義主張を通そうとしていがみ合って、沙奈子を泣かせたことに怒ってるんだ。


『沙奈子ちゃんを守りたい』


そんなことを言ってたのに、その自分が沙奈子を泣かせてるんだから、一体、何を大切にしたいのか分からないよ……。


アニメを一番に大切にしたいのなら、『沙奈子ちゃんを守りたい』なんて言わないでほしかった。


ううん。言うのは別に構わないけど、その言葉を信じてもらえるとは思わないでほしいかな。


事実、僕が秋嶋さんたちと微妙に噛み合わない気がしていたのは、そこだったのかもしれない。


秋嶋さんたちは結局、沙奈子のことを生きた人間としてじゃなくてアニメのキャラクターのように見ていたのを感じ取ってしまっていたのかもね。






三月三日。日曜日。曇りのち雨。




昨日、絵里奈と玲那に会いに行った時、玲那が言ってた。


「当分、オフ会はなしってことになった。サークル的に活動もしてたけど、それも無期限休止かな……。


もしかしたらこのまま空中分解するかも……」


「玲那……」


悲しそうに俯きながら言う玲那の肩を、絵里奈がそっと抱き締めてた。


そして沙奈子は、何も言わずに冷めた視線で窓の外の景色を眺めてただけだったな。




お昼、千早ちはやちゃんが来て、沙奈子の表情を見た第一声が、


「まだ片付いてないんだ……?」


だった。険しい顔で秋嶋さんの部屋がある方を見て、


「大学生にもなって何やってんだよ。このクソが……!」


って吐き捨てるように言う。


その姿はまるで、沙奈子にきつく当たってた頃の彼女に戻ってしまったかのような印象があった。


すると星谷ひかりたにさんが、悲しそうな目で彼女を見ながら、


「……千早、人間は『クソ』ではありません。クソ呼ばわりするというのは、それは人間を人間として見做さないという意味になります。私はあなたが人を人として扱わないという行為について看過することはできません……」


と静かに諭すように言葉を掛けた。


星谷さんは、千早ちゃんが良くないことをした時、後から小言を並べるんじゃなくて、その場で端的に言うようにしてるそうだ。


子供自身が、自分のしたことをちゃんと省みられるようにね。




今日は雛祭りなのに、結局、そんな気分じゃなかったのだった。



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