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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百七十八 美嘉編 「嫌いになりそう……」

二月二十六日。火曜日。晴れ。




「とっくんは別にね、『二期も面白いと思え』ってあっきーに押し付けてるわけじゃないんだよ。矛盾点とか『これはいただけないな』って思う点もあるけど、だからって監督やシナリオの人の人格攻撃までするのはおかしいって言ってるだけなんだ。そしたら、あっきーは、


『あんなものを擁護するお前はアニメを分かってない!。お前はアニメファンじゃない!!』


とまで言い出しちゃってさ……」


って、そんなことがあったのか……。


確かに時々、大きな声で言い合ってるような気配はあったけど、それ自体は以前からあったことだし気にしてなかった。ただ沙奈子が少し悲しそうな表情になるから、自重して欲しいなとは思って、玲那にそれとなく伝えておいてほしいとお願いしてたことだった。


でも、自分の好きなもののことでは譲れないっていう想いも否定していいことじゃないとは思うから、『四の五の言わずにやめろ!。仲良くしろ!』って押し付けるのも違うかなとは思ってたんだ。


すると、玲那の話を聞いた沙奈子が、ますます悲しそうな表情になった。


自分を『好きだ』『守りたい』と言ってくれてた人たちがそうやって揉めてるのが悲しいんだなっていうのが伝わってくる。


玲那もそれに気付いて、


「ほんっと、沙奈子ちゃんまでこんな風に悲しませて、何やってんだって話だよ。


私は辛い時にアニメに支えてもらってたのは確かにあって、アニメが大好きですごく大事だと思ってる。『ヒドい出来だな』って感じるアニメを見た時なんかはブルーにもなるよ。


でも、だからって、監督や脚本の人や、そのアニメを面白いと感じた人を罵ったりするのは違うと思うんだ。そんなの、


『店員を罵ったり、土下座させようとしたりする客』


と同じじゃん!。私、そんなのイヤだ…!。同じアニメを好きな人間として、辛いよ……。


私、このままじゃあっきーのこと、嫌いになりそう……」


だって……。


僕は正直、アニメのことはよく分からない。秋嶋さんのこだわりも、何にそんなに怒ってるのかも分からない。


だけど、それだからこそ、アニメに興味のない僕にとっては、『たかがアニメ』で玲那や沙奈子をこんな風に悲しませる秋嶋さんのことが『許せない』と思ってしまう。


秋嶋さんがアニメのことで『許せない!』と思ってしまうのと、たぶん同じじゃないかな。


『このままじゃあっきーのこと、嫌いになりそう』


って玲那が思うのも、当然だって気がする。


誰かを攻撃するのって、こういうことなんだ。


改めてそれを実感した気がしたのだった。



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