九百七十六 美嘉編 「自分が損をすると」
二月二十四日。日曜日。曇り。
『私の人生って、こんな形で終わっちゃうんだ。と思った』
という玲那の話を、千早ちゃんと大希くんの付き添いでうちに来た星谷さんにも改めてした。
すると彼女はキッと視線を強めて言ったんだ。
「玲那さんのように素晴らしい方の人生がそのような形で終わっていいはずがありません。そのような社会は間違っていると私は思います……!」
星谷さんにそんな風に言ってもらえるのは、本当に嬉しかった。玲那のことをそんな風に思ってくれる人が僕たち家族以外にもいるというのが、すごく心強かった。
だけどこれも結局、玲那が『そう思ってもらえる人』だったからだろうな。もしこれがネットで他人を罵ってるようなコだったら、ここまで思ってもらえなかった気がする。
そうなんだ。
『他人に対して攻撃的』っていうのは、結局は自分にとって不利になる。
これが例えば、そういう不利な状況さえ撥ね退ける強い力を持った人なら別に気にするほどのことじゃなくても、
『どうして自分はこんなに不幸なんだ!?』
とか、
『どうして自分ばっかりこんな嫌な思いをするんだ!?』
とか泣き言を並べてる人が、ネットとかで他人を攻撃してたりしたら、助けたいと思ってもらえるのかな?。
自分はそういう人を助けたいと思う?。
『自分は助けたいと思う』
って言う人だって、その相手が、自分と対立してる人だったら?。それでも助けたいと思えるの?。
僕は、正直、そんな風には思えない。
ネットの『炎上』を悲しいと感じて、それが収まってくれることを願う玲那のような人なら助けたいと思えても、『たとえ攻撃的な人でも見殺しにしちゃいけないんだろうな』と考えることはあっても、自分の気持ちとして、素直に、
『助けたい』
とは思えないだろうな。
結局、そういうことなんだ。
誰かを攻撃するっていうのは、そうやって自分の首を絞めるってことなんだと思う。
星谷さんも、以前は攻撃的な人だったっていう。
だけど彼女は、そんなことをしていたら自分が損をすると気付くことができたから、改めることもできた。
でも世の中には、今もせっせと他人を攻撃し続けてる人たちがいる。
そういう人たちに巻き込まれて嫌な思いをする人もいる。
そりゃそんな世の中じゃ、幸せになるのも難しいよね。
他人を攻撃し続けながら、
『自分はどうしてこんなに不幸なんだ!?』
とか嘆いても、それこそ、
『何言ってんの?。自分が不幸なのは、自分が原因を作ってるからじゃないのさ』
って話なんだろうな。




