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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百七十五 美嘉編 「私の人生って」

二月二十三日。土曜日。曇りのち晴れ。




「お!、フミ、合格だって♡」


絵里奈と玲那に会いに行くためにそろそろ用意をしようかなってなった時、ビデオ通話の向こうで玲那が嬉しそうに声を上げた。


田上たのうえさんが志望校に合格したってメッセージが届いたらしい。


その時、僕のスマホにも着信があった。同じく田上さんからの、


『おかげさまで無事合格です。ありがとうございました♡』


っていうメッセージだった。一斉送信で送られたものだから、玲那や絵里奈に届いたものと同じだ。


「ああ、よかった…!。本当によかった」


絵里奈がスマホを見ながら胸を撫で下ろしてるのが見える。


僕も気持ちは同じだった。胸を撫で下ろしてる状態だ。


これで田上さんはまた自分の状況を変えることができる。


家を出て、一人暮らしを始めて、アルバイトも始めてってするそうだ。学費も生活費もできるだけ自力で何とかしたいって。一応、ご両親からは出してもらうけど、と言うか、お母さんが『貧乏人みたいでみっともないから』って押し付ける形で出すそうだけど、それにはなるべく手を付けないようにしたいって。


「だけど、これから大変だよね。全部一人でしなきゃいけなくなるんだから」


今日は鈴虫寺近くの喫茶店に行く。その途中、信号待ちの時に玲那はそう話しかけてきた。


もうほとんど画面を見ずに操作してる。見るとしてもちらっと視線を向けるだけだ。なのに指だけはものすごい速さで動いてた。完全に感覚だけでできるみたいだ。これなら普通にしゃべってるのと変わらない気がする。


『慣れってすごいなあ』


なんて思いながらも、


「そうだね」


と僕は返した。


「でも、部屋はこのすぐ近所らしいし、何かあればすぐに駆け付けられますよね。病気の時でも」


絵里奈は玲那のスマホ操作は見慣れてるから別に気にしてる様子もなくて、普通に話を広げる。


だから僕も特に気にしないようにして話を続けた。


「そうだね。一人暮らししてると一番困るのが病気した時っていうのは確かにあると思う」


すると玲那が、


「いや~、私も一人暮らししてた時、ウイルス性の胃腸炎にやられてさ。これがびっくりするくらい痛くて、『あ……私、これで死ぬんだ……』ってマジで思っちゃったよ」


と、笑いながら冗談めかして言ってきた。


だけどそのすぐ後で、


「あん時は、『私の人生って、こんな形で終わっちゃうんだ……』とも思ったな……。


何にもいいことなくて、辛くて苦しいだけで……。神様ってどんだけ不公平なんだろうなって思っちゃったりしたかな……」



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