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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百七十三 美嘉編 「面倒臭くても大変でも」

二月二十一日。木曜日。曇り。




『親のすることは無条件に正しい』


みたいな思い込みが、取り返しのつかないことになる前に冷静になって客観的に省みるっていうのを阻んでるんじゃないかな。


『自分は絶対正しい。間違ったことなんてしない』


っていう思い込みこそが、多くの問題を引き起こしてるんだろうな。


僕も気を付けなきゃって思う。


自分のやってることが合ってるかどうかは、その時その時に出た結果で判断しなきゃいけないと思うんだ。


たとえ上手くいったとしても、後から見て結果的にそれが正解だったっていうだけで、最初から『こうするのが正しい』と決めつけてかかるのは危険なんだろうなって。


僕は、いつも沙奈子の様子を見てる。目を見て、表情を見て、仕草を見て、振る舞いを見て、自分の言ったこと、したことが適切だったかを考えるようにしてる。


自分が『こうするのが正しい!』と思ったことを一方的に押し付けないようにしてる。


『たぶんこうした方がいいだろうな』


と思うことを言ったりしたりはするんだけど、それが本当に正解だったかは、沙奈子自身の反応を見て判断するんだ。


彼女が困ったような表情をしたら、いくら自分は『こうするのが正しい』と思ってても、適切じゃなかったんだろうなと考えて、次はどうすればいいのかをその都度考える。


すごく面倒なことだと思う。多くの人が、


『そんなことしてられるか!』


って考えると思う。


だけど、他人を気遣うのって結局はそういうことなんだと思うんだ。その人にとって自分の言動が適切かどうだったかを常に考えることこそが『気遣い』だと僕は思うんだ。


そして、どうするのが他人を気遣うことになるのかを、沙奈子に見てもらうんだ。見て、真似してもらうんだ。


そのための手本を、親である僕が示さなきゃいけない。


これは、山仁やまひとさんがイチコさんや大希ひろきくんに対してしてることでもある。僕は、山仁さんがしてるそれを参考にしたんだ。山仁さんがイチコさんや大希くんに接する時にそうしてるのを見て、イチコさんや大希くんがすごく穏やかな表情になるのを見て、二人があんなに穏やかで朗らかでいられてる一番の理由がそこにあるって感じたんだ。


何が正しいのかは、正解なのかは、その時その時で違うと思う。だから一方的な押し付けは上手くいかないことが多い。同じようなことを同じように言っても、相手の気分や精神状態によって受け取り方が違うこともある。


面倒臭くても大変でも、僕は、僕の大切な人に対してはそれを忘れたくない。


それ以外の人に対しては、そこまではできないけどね。


なにしろ、普段からしっかりと表情とか仕草とかを見てるわけじゃないから、沙奈子の心の動きが見えるほどは察することもできないし。



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