表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
971/2601

九百七十一 美嘉編 「どこまでも子供を支配して」

二月十七日。日曜日。晴れ。




「めっちゃリラックスしてできたよ。かなり良かった気がする」


昨日、絵里奈と玲那に会いに行った後で山仁やまひとさんのところに行くと、制服姿の田上たのうえさんがニコニコ笑顔で玲那にそう言ってた。


合格発表は次の土曜日。もちろん結果を見るまでは分からない。分からないけれど、彼女がすごく手応えを感じてるのは伝わってきた。


すると星谷ひかりたにさんが、


「既にフミが一人暮らしを始めるための物件についても、当たりをつけています」


だって。本当に抜かりないなあ。


その物件は割と近所で、これまで通り、毎日でもここに集まれるものらしい。僕の部屋があるのと同じようなアパートなんだって。


そうなってくるとセキュリティの心配もあるものの、そこは元々女子学生向けの物件で、今も入っているのは全員が大学に通う女の子だそうだ。まさに田上さんにとってはうってつけの物件ってことだろうな。


「やったじゃん、フミ。自分の力で生きていけるようになる一歩だよ」


玲那が言うと、田上さんはちょっと苦笑いで、


「だけどお金はあの人達が出すから、正直、まだまだだよね。バイトするって言っても、学費も生活費も家賃もってなったら、学校に行く暇なくなっちゃうし」


だって。


それはあると思う。全部を賄えるくらいに稼ごうと思えば、アルバイトだけで一日が終わっちゃうよね。


玲那が言う。


「うちは両親が形の上では『無職』ってなってたから奨学金も受けられて自分で払ってるけど、奨学金を利用させてもらえないっていうのはきついよね」


すると今度は星谷さんが、


「フミの家庭の場合は、公務員であるお父さんに十分な収入があるので元より申請が通らなかった可能性は高いですが、今回の件で、『親に学費を負担して欲しくない』事例というものもあるのを感じました。また、『十分な収入がありながら負担してくれない』という事例もあるでしょう。家庭の経済力だけで審査するのは必ずしも実情にそぐわない可能性もあると改めて実感しました」


と。


それは僕も感じてしまった。子供が親から自立することを目的に奨学金を受けようとしているのにそれが通らないというのは、なんだか本末転倒なような気もしてしまう。


もっとも、経済力の部分についてはあくまで『家計を同じくしてる』っていうのが確かあったはずだから、とにかく家を出て『家計を同じくしてる』状態じゃなくして申請するっていう方法もあったのかな。


ただ、田上さんの場合は、それもお母さんが認めてくれなかったらしい。とにかく家を出るのは大学に合格するのが条件だって。しかもその理由が、『心配だから』とかじゃなくて、


『世間体が悪いから』


ってだけの話で……


どこまでも子供を支配して、思い通りに操りたいんだなって思ってしまったんだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ