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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百七十 美嘉編 「学校はあくまで」

二月十六日。土曜日。快晴。でも風は少し強い。




沙奈子と一緒に暮らし始めて、彼女を学校に通わせて、僕は改めて実感した。


『子供を躾けるのは親の役目で、学校にやってもらうことじゃないんだな』


って。


学校はあくまで、『学業の場』だ。勉強に集中できるような子に親が育てて、それで送り出すんだ。決して学校に躾けてもらうんじゃない。


それがすごく分かる。


もっとも、僕は『躾』って言葉は嫌いだけど。


大人がそもそも未熟なのに、その大人が何を躾けられるって言うんだろう。だから僕にとっては、あくまで『躾』じゃなく、『真似してもらう』ことが大事だった。


ルールを守るのも、他人を気遣うのも、沙奈子に僕の真似をしてもらえればそれでいいと思ったんだ。


だけどそのためには、沙奈子に『真似をしたい』と思ってもらえる親でなくちゃいけないと思う。そしてそれがすごく大事なんじゃないかな。


山仁やまひとさんを見ててもすごくそう感じた。大希ひろきくんの振る舞いのほとんどはお父さんである山仁さんの真似なんだ。沙奈子に優しくしてくれるのも、大希くんに接してる時の山仁さんの真似だというのがすごく分かる。


お父さんに優しくしてもらえてるから、気遣ってもらえてるから、大希くんは、


『人に優しくするにはどうすればいい?。気遣うにはどうすればいい?』


っていう時には、自分に接してくれてる時のお父さんの姿を手本にしてその真似をするだけで済んでるんだ。


だから彼は、『どうしたらいいの?』なんて何一つ苦労することなく、悩むことなく、当たり前のこととして人に優しく、気遣うことができるんだ。


そして僕は山仁さんからそれを学んだ。


『沙奈子をどう躾ければいい?』


なんてことを悩む必要もなかった。


『こういう人になって欲しい』


と思う人に、僕がなればいいんだから。決められたルールを守って、他人を傷付けるような嘘を吐かずに、他人を罵らずに、沙奈子が他人に接する時にはこういう風に接してほしいと思う接し方を、沙奈子に対してするんだ。


もうそれだけで事足りてしまう。


だけどそのためにはやっぱり、僕自身が、沙奈子にとって、『真似したい』『参考にしたい』って思える大人でなくちゃダメだけどね。




ところで、今日は田上たのうえさんの一般入試の日でもある。


ただ、センター試験の結果が良好で、もうほぼそちらだけで合格間違いなしということだったから、すごく気楽に受けられるみたいだ。昨日、山仁やまひとさんのところで顔を合わせた時も、余裕の表情だったし。


最後の最後の足掻きみたいに必死な様子も見られなかった。


だから僕も心配せずに絵里奈と玲那に会いに行けたんだ。




あと、バレンタインデーの日、当然のように、鷲崎わしざきさんからは立派なチョコレートを貰った。


「これはいつもお世話になってるお返しも含めてです♡」


だって。



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