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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百六十七 美嘉編 「玲那と同じような」

二月十一日。月曜日。また雪が降った。でも結局積もらなかったな。




今日は祝日。あたたかい部屋の中でゆっくりと過ごす。これが僕たちにとっては何よりの贅沢な過ごし方。


沙奈子も人形のドレス作りに集中できて嬉しそうだ。


この人形のドレス作りがこの子にとっては何にも代えがたい楽しみなんだな。


たぶん、絵里奈や玲那と一緒に暮らせないっていう現実も、これに集中することで紛らわせてるみたいだ。


そして僕は、そんな沙奈子の様子を見てることが一番の『癒し』だな。


また、ビデオ通話の画面の向こうでは、玲那が相変わらず忙しそうに作業をしてる。できれば手伝ってあげたいんだけど、画面の向こうじゃそれもできない。


だけどこれは、『玲那の仕事』だからね。


変に手を出すのも違うのかもしれない。




あと、星谷ひかりたにさんのレポートは、


『玲那の事件を基にした架空の事件の裁判のシミュレーション』


『声を失った人が普通にしゃべるようにして話ができるようにする技術の開発とそれをバックアップするための法整備等のシミュレーション』


『前科を持った人の社会復帰を、起業によってサポートするシミュレーション』


の三つを提出することが本決まりになった。


本当ならそのうちのどれか一つでいいみたいだけど、あくまで玲那の社会復帰に向けた一連の方策として繋がったものだから、一つだけだと『未完成』ということみたいだ。


ただし、内容自体はあくまで、


『現実にもありうる架空の事件を基にしたシミュレーション』


であって、そこに出てくる人物は全員、架空の存在として描かれてた。だけど同時に、架空の存在でありながら『血の通った人間』としてそこにいるというということを徹底されてた。だから玲那が実際に経験したことが必要だったんだ。


僕も一部を読ませてもらったけど、玲那のことを知ってるから余計にというのはあったとしても、そこに出てくる『被疑者』に対して共感してしまって、途中から涙が止まらなかった。


決して小説とかという感じじゃなくて『裁判資料』という体裁なのに、『被疑者』がどんな人生を送ってきて事件に至ってしまったのかっていうのが刺さってしまった。


読んだ時の実感としては、


『玲那と同じような目に遭った女の子がいたんだ……』


って感じかな。玲那の姿と被るんだけど、でも玲那じゃない。


『どこかに実際にいる、玲那と同じような経験をした女の子』


という印象だった。それがまた辛くて……。


その子にも本当に幸せになって欲しいと思ってしまったんだ。



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