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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百六十五 美嘉編 「自分が好きなものを自分で」

二月八日。金曜日。曇り。朝はそれほどじゃなかった気がするけど、昼過ぎから冷えてきた気がする。




玲那が言ってたな。


「今、あるアニメが炎上状態にあってさ。もうヒドイんだ。去年やってたアニメの続編なんだけど、一期と比べるとあんまりにもお粗末な出来だってことで。


いや、お粗末なだけじゃないのか。一期を貶めるような内容だってことで、一期のファンだった人たちから袋叩き状態なんだよ。


まあ、確かにね。私も決して出来がいいとは思わないよ?。一期の頃にあった良さみたいなのがまるっきり失われてるなとは正直思う。


だけどさ、だからって今みたいな状態は、一期で描かれてたことをそれこそ貶める行為なんじゃないかって私は思うんだよ。


だって、私はあれを、


『お互いの違いを認め合って共存していこう』


っていうメッセージだと思ったんだ。


自分にとっては都合の悪い相手かもしれない。気に入らない相手かもしれない。でもだからって攻撃するばかりじゃお互いに傷付くばかりだってさ。


こういうエピソードもあったよ。


長い間、お互いに争い続けていた二つのグループがあって、でももう、そういう状態に疲れを感じてる仲間もいたんだ。


でもそこに主人公の子が現れていがみ合ってた二つのグループの間を取り持って和解に導いたんだよ。双方、思うところはあるかもしれないけど、傷付け合うだけじゃどっちも疲弊しちゃう。もうここはお互いに譲歩して、共存していこうってことになったんだよ。


続編の方ではそういう一期で描かれてたことが何もかも台無しにされた、穢されたっていうんでファンの人たちが激怒して続編のことを罵ってるの。


けどそういうのって、一期で描かれてたことをそれこそ台無しにして穢す行為なんじゃないかな。自分が気に入らない、許せないってことで誰かを攻撃するんだよ?。そういうのって悲しいことだよねってメッセージが込められてたんじゃないの?。


自分が好きなものを自分で台無しにしたり穢したりって、それでいいのかなあ……」


玲那は悲しそうにスマホに目を落としながらそう『言った』。


僕はそのアニメのことは知らないけど、玲那の言いたいことは分かる気がしたんだ。






二月九日。土曜日。曇り時々晴れ。寒さがぶり返してきたのかな。




いつものように絵里奈と玲那に会いに行く。暖かかったら鈴虫寺近くの喫茶店まで歩いて行こうって話だったんだけど、寒かったから、絵里奈が見付けた人形を置いてる喫茶店の方に行くことになった。


そこでも玲那は言ってたな。


「なんか、この先の展開が怖いよ。一期の主人公が出てくるかもって噂もあるんだけどさ、今の調子じゃ『火に油』ってことになるんじゃないかって……」



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