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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百六十一 美嘉編 「攻撃する口実が」

二月一日。金曜日。朝は雪がちらついてたけど、本格的には降らずにやんだ。




いよいよ沙奈尾の小学校生活も残り二ヶ月。実際には卒業式までは二ヶ月もないけどね。


中学の制服の代金も支払いが終わって、後は小学校の方に届けられたら受け取るだけだ。


でも、沙奈子の方は、中学に通うことをそれほど不安がってもいないみたいだ。


この子は、実の父親の身勝手に付き合わされて小学校に上がったばかりの時から何度も何度も転校させられた挙句に、二年生の時からは一切、学校に通わせてもらえなかったから、そういう意味で環境が変わることに慣れてしまったのかもしれない。


皮肉な話だけど。


かと思うと、大希ひろきくんも別に不安は感じてないみたいだって。彼の場合は、千早ちはやちゃんや沙奈子が一緒の中学に通うからっていうのもあるけど、元々満たされてるから少々のことでは不安になる必要がないみたいだね。


その一方で、千早ちゃんは、不安を感じてるらしい。本人は強がって口にしないけど、星谷ひかりたにさんには時々、


「大丈夫かな…?」


みたいなことは聞いてくるって言ってた。それに対して星谷さんは当然、


「何も心配は要りませんよ。私がついています」


と言ってくれてるって。本当に『お母さん』みたいだな。


実のお母さんの方は、今もそんなこと言ってくれないらしいけど……。


だけど千早ちゃんの家庭の場合は、とにかく暴力が収まってるだけでも良しとしなきゃいけないんだと思う。


『普通』を求めちゃいけないんだ。






二月二日。土曜日。快晴。




人は、見ず知らずの他人が抱えてる『事情』なんて、理解することができない。


玲那や千早ちゃんや波多野さんや田上たのうえさんの事情とか、理解する気もないんだ。


なにしろ、玲那が実の両親にどんな目に遭わされてきたのかっていうのが週刊誌にすっぱ抜かれても、


『どうせ嘘だろ』


とか、


『陰謀だ』


とか言って逆に玲那をもっと攻撃した人たちだっていたらしいし。


ただそれも、世の中には、嘘を吐いてまで自分を正当化しようとする人も確かにいるから、まったく疑わずに真に受けるのも危険だとは思うけどね。


だけど少なくとも玲那の件は警察の捜査で裏付けされた『事実』だ。


それでも、その警察さえ疑ってる人たちには通じない。


そういう人たちは、結局、単に自分が攻撃する『口実』がほしいだけで、それが事実かどうかなんてどうでもいいんだろうな。


ホントに悲しいよ。それって結局、そうまでして他人を攻撃せずにいられない『事情』がその人にはあるってことだろうから。


周囲の人たちがそういう人を放ってるっていうのが悲しいんだ。



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