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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百五十八 美嘉編 「そんな星谷さんだから」

一月二十八日。月曜日。曇り。


土曜日から日曜日の明け方まで降っていた雪は、今日にはもうほとんど融けてしまってた。




不思議と日付ではあまり気にならないのに、雪を見るとついつい『あの日』を思い出してしまう。


『玲那が事件を起こしてしまったあの日』のことを。


だけど同時に、それが少しずつ少しずつ『過去』になっていってるのも感じるんだ。


それはきっと、僕たちが幸せな毎日を、一日一日淡々と送ることを心掛けてるからなんだろうな。


けれど、忘れてしまってもいけないんだろうと思うんだ。


『過ちを犯してしまった事実』


をね。


それを忘れずに向き合いながらも『過去の一つ』にする。これが大事なのかも。


玲那はちゃんと向き合ってくれてる。自分がしてしまったことを忘れずに向き合ってくれてる。


本当に強い子だ。


ただし、彼女が強くいられるのは、たくさんの人達に支えてもらえてるからだっていうのもすごく感じるんだ。


その事実も忘れちゃいけないな。


そんな、『玲那を支えてくれている人』の一人、星谷ひかりたにさんが最近ますます綺麗になっていってる気がする。


特に何か見た目を変えたとか、化粧をし始めたとかじゃないんだけど、なんて言うかな。やっぱり『表情』が大人っぽくなってきてるのかもしれない。


元々、大人ぽい雰囲気を備えた人だったのが板についてきたって言うか。


もちろん年齢的にも十八歳ということで大人の女性に近付いてるっていうのもあるにしても、それ以上に『深みを増した』というか『厚みを増した』感じなのかな。


こんな素敵な女性に好かれて、大希ひろきくんは果報者だな。


ああでも、そんな素敵な女性に相応しい男性にならなきゃいけないっていうのは、なかなか大変なことかもしれない。僕にはとても無理そうだ。


その星谷さんも受験を間近に控えて、いろいろと準備を整えてるみたいだな。提出するレポートの仕上げに入ってるらしい。それについて、玲那とも打ち合わせをしてるって。


玲那の事件を基にしたレポートだから、どこまで書いていいのか、表現とか内容について、確認をしてほしいってことなんだって。


もっとも玲那自身は、


「ピカに任せるよ。ピカにだったら何書かれても平気」


って言ってるけどね。


それでも星谷さんは、


「いえ、そういうわけにはまいりません。玲那さんにとってはとても大切なことですから」


と、やっぱりちゃんと玲那に確認してもらうのが筋だと思ってるみたいだ。


そんな星谷さんだから玲那も安心して任せられるんだろうな。



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