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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百五十六 美嘉編 「私をスケープゴートにして」

一月二十五日。金曜日。曇り。




犯罪なんて身勝手な行為だ。それは疑いようがない。


玲那がやったことだって、当の玲那自身がそう思ってる。


「他にやりようがあったはずなのに、『そうするしかない』って思い込んでやる……。自分がやったのはそういうことなんだって今なら分かるよ……。


でも、それでも、あの時はそうするしかなかったんだ……。そうするしかないって思っちゃったんだ……」


涙を浮かべながら玲那はそう言った。


本当は心の優しい、他人の痛みを想像することができるこの子をそこまで追い詰めたのは、他ならない彼女の『実の親』だった。


波多野さんのご両親は、そこまでのことはしてない。虐待らしい虐待があったわけでも、取り立てて道理に外れたことをしてきたわけじゃないのは、波多野さんが実際に見てきてるから分かってる。


だけど、その波多野さん自身が、ご両親のことを強く恨んでる。お兄さんが彼女に対してしてきたことを気付かないフリをして、目を瞑って、結果として波多野さんの心を踏みにじってきた。


お兄さんに『性的に悪戯』されるのが嫌で『部屋に鍵をつけたい』と言ったら、


『家族を信用できなくなったら人間としてお終いだぞ』


みたいなことを言って鍵をつけさせなかったって。


それでもう、波多野さんはご両親のことを見限ってしまったらしい。


『ああ、この人たちは、私をスケープゴートにしてあの男を育てる気なんだ』


って。


『健康な男の子なら性的なことに興味があるのは当たり前。それで他所様の娘さんに手を付けるくらいなら自分の妹で発散してくれた方がマシ』


って考えてるんだろうなって察してしまったんだって。


そしてそれは事実だったみたいだ。だからこんなことになってしまった。


『自分の妹で発散して我慢してくれたら』


なんていう両親の『身勝手さ』や自身に都合の悪いことには目を向けない部分をお兄さんはしっかりと見倣って、今もごね続けてる。


僕も『親』として、そういうことから学んでいかなきゃいけないと思う。


『自分は正しい』


『自分は間違ってない』


『親は間違わない』


『大人は間違わない』


って思い込むことの怖さを。


親だってただの人間なんだ。間違うことだってあるし失敗することだってある。


でも、失敗して間違うこともある自分を棚に上げて『自分のすることは正しい』という態度を子供の前で見せてたら、子供もそれを見倣って当然だと思うんだ。


むしろそれを見倣わない理由がないと思う。


例えばそれが好ましくないことだって他の誰かの働きかけで気付くことがあれば反面教師として活かすことができるようになるかもしれないけど、そういうのって結局は『運』だよね。


そういう運頼みのやり方って、『育児』とは言えないと思うんだ。



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