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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百五十五 美嘉編 「本当に身勝手すぎる」

一月二十四日。木曜日。晴れ。




『あの日』からもう、二年以上が経った。思い返してみるとあっという間だった気もする。


それに、『あの日』からちょうど二年っていう日も意識しないで過ごせた。


もしかしたら無意識のうちに考えないようにしてただけかもしれないけど、それができたっていうのがありがたい。


毎年『あの日』が来るたびに落ち込んでいたりしたらキリがないから。


だからか、星谷ひかりたにさんたちも触れてこない。


そして僕たちも、波多野さんのお兄さんの件についてもこっちからは触れないようにしてる。


波多野さんのお兄さんの件は、大人と同じように裁判をするってことが裏目に出たのか、とにかくあれやそれやでお兄さんがごねてちっとも先に進まないらしい。少年審判のままでやってたらもうとっくに結審してたらしいのに。


そこまでできるっていうことにむしろ感心させられる。いったい、何を心の拠り所にしてそこまで頑張れるんだろう。


星谷ひかりたにさんが言ってた。


「彼はもしかすると、ご両親に『意趣返し』がしたいのかもしれません。彼にとってご両親は尊敬できるような人物ではなかった。自身に都合の悪いことには目を瞑り、子供を意のままに操ろうとする忌まわしい存在。それが彼にとっての『親』だったのでしょうか。


そんな親に対して、いえ、そんな親が築いた『家庭』そのものに意趣返しを図っているのかもしれません」


「身勝手ですね……。本当に身勝手すぎる……。


でも、僕も今は『親』だから、もし、沙奈子が罪を犯すような人になるとしたら、どんな風に接してたらそうなってしまうのかって考えると、分からなくもない気がしてしまうんです。


僕があの子に対してどんな風に接してたら、他人を傷付け踏みにじるような人間になってしまうかって考えるんです……。


それは、僕があの子を傷付け踏みにじるような真似をしたらなんだろうな。って……。


僕がそういうことをすれば、あの子もそれを真似して他人を傷付けるようになってしまう気がするんです。


しかも、そういうことができる僕だったら、きっと、自分のやったことを省みられない人間だと思う。そんな部分も、あの子はきっと見倣うでしょう。自分が良くないことをしてもそれを省みないで、『相手が悪い』って責任転嫁ばかりする……。


それこそ、今のお兄さんそのものですね……」


「…まさにその通りだと思います。カナのお兄さんのしていることはまさしくそれなんでしょう。ですからあれだけのことができてしまう……。


私はそこからも学びたいのです。自身が同じ過ちを犯してしまわないように……」



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