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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百五十一 美嘉編 「幸せになるための手段」

一月十九日。土曜日。快晴。




いよいよセンター試験の一日目だ。


田上たのうえさんは自宅から直接試験会場に行くんじゃなくて、一旦、山仁やまひとさんの家に顔を出してから行くそうだ。


自分の家で重い気分になったままよりも、少しでも穏やかな気持ちになって行きたいってことで。


だけど、あんまりみんなで見送ったり応援したりするとかえってプレッシャーになるかもだし、僕と沙奈子は見送りにはいかなかった。


いつも通りに、絵里奈と玲那に会いに行く。


「田上さん、上手くいってほしいですね」


今日は絵里奈が見付けた人形を飾ってる喫茶店だ。


席に着くなり、絵里奈が言った。


「うん。僕も祈ってる」


僕が応えると、玲那と沙奈子も頷いてくれたのだった。






一月二十日。日曜日。雨。




センター試験二日目。


あいにくの雨だったけど、一日目で手応えを感じてた田上さんは、昨日よりも明るい表情で行けたらしい。


「これが良い結果に繋がってくれればと思います」


いつものように千早ちはやちゃんと大希ひろきくんが料理を作ってるのを僕と一緒に見守りながら、星谷ひかりたにさんが言った。


だけど続けて、


「でも、もし、たとえ良い結果に繋がらなかったとしても、これ自体が『経験』というものでしょう。それを次に活かせばよいのです」


とも。


それは、僕も同感だった。今回の入試で田上さんの人生のすべてが決まってしまうわけじゃない。テストの合否はあくまできっかけの一つでしかない。


とは言っても、当然、上手くいってくれるのに越したことはないからね。


そして夕方。


山仁やまひとさんの家に行った時、


「めっちゃ手応え感じたよ!。行けた気がする!」


田上さんがすごく明るい表情でそう言ってた。


その様子に僕もホッとする。


もちろん、最終的に結果が出るまでは分からないにしても、それでも『手応えがあった』っていうのはいい兆候だと思う。


星谷さんもそう感じてたのか、表情が柔らかい。


「ここで油断するわけにはいきませんが、同時に、今から焦っても始まりませんので、結果を待ちたいと思います。


また、結果がどうあれ、フミが家を出て一人暮らしを始めるにあたっての物件もすでに目星はつけていますので、一段落ついたら一緒に内覧に行く予定です」


相変わらず抜かりないなあ。


だけど田上さんにとっては、家を出ることは『悲願』と言ってもいいくらいの真剣な願いだった。それに応えようとするのは、星谷さんにとっては本当に当たり前のことでしかないんだろうな。


すべてが、幸せになるための手段なんだ。



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