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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十八 美嘉編 「万難を排してでも」

一月十六日。水曜日。曇り。




『お二人がそれに値する方だと思えばこそという打算の産物なのです。ですから恩を感じていただく必要もありません』


それも、星谷ひかりたにさんの正直な『意見』だった。


彼女が単純な『綺麗事』では動かない人だって分かるからこそ、逆に僕は彼女が信頼できた。


『困ってる人を助けるのは当然じゃないですか』


的なことを言われると、きっと、『どこに本心があるんだろう?』と勘繰ってしまったと思う。


でも星谷さんは、はっきりと、


『私は打算で動いています』


と言って、しかもその『打算が何か?』というのも示してくれてるから信頼できるんだ。


『僕たちが、大希くんや千早ちゃんのことも大切にしてるから、その見返り』


として。


しかも、僕たちが、


『見返りを期待して大希くんや千早ちゃんを大切にしてるわけじゃない』


のが伝わってるからなんだろうな。


そして僕たちが大希くんや千早ちゃんを大切にできるのは、他でもない二人が沙奈子を大切にしてくれてるのが分かるからなんだ。


僕たちも決して綺麗事では動いてない。大希くんや千早ちゃんが沙奈子を大切にしてくれてるっていう事実があるから二人を大切にできるんだ。


どちらが先かっていうのも関係ない。気付いたらそうなってただけだった。


そうするのが当たり前って感じで。


この辺りは相性の問題もあるのかな。


ところで、結人ゆうとくんの一件があったことですっかり忘れてたんだけど、実は去年のクリスマスイブに山仁やまひとさんの家で行われたパーティーは、大希くんの誕生日ハーティーを兼ねたものだったんだ。


だけど僕はそれには参加してない。


でも誰も、それを責めるどころか気もしてなかった。当の大希くんが、沙奈子が、


「お父さんは行けない…」


って言ったら、


「うん、分かった」


とサラッと受け流してたって。


大希くんや千早ちゃんのことを大切にしてるって言ったら、そういうイベントとかに欠かさず参加してるって思われるかもしれないけど、僕たちの場合、そういうことについては緩やかだった。


誰もそれを強制しないし、気にしたりもしない。イベントとかに欠かさず参加することが『大切にする』ってことじゃないからなんだろうな。


僕たちの考える『大切にする』っていうのは、相手のことを『ありのままに受け止める』ってことだから。


誕生日パーティーに参加できないのなら、『参加できないっていう事実』をそのまま受け入れるんだ。


『他の何を差し置いてもそういうイベントには参加するべき、そうするのが相手を大切にすることだ』


って考える人たちとは、僕たちは合わない。


だってそれって、相手のことを大切に想ってるっていうより、


『万難を排してでもそういうイベントには参加する自分が好き』


っていう風にしか見えないんだ。



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