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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十六 美嘉編 「なにとぞお慈悲を~!」

一月十四日。月曜日。晴れ。成人の日。




今日は特に何の予定もないから、家でゆっくりする。


沙奈子はいつものように人形のドレスを作ってた。


彼女の腕前はますます上達して、しかも評判が評判を呼んで、競争になってるらしい。


なんでも、沙奈子のドレスを中心に人形に着せて紹介するブログまでいくつか立ち上がってるって。


「いやいやこれは本当にすごいことだよ。小学生の作ったドレスがここまで人気になるなんて」


ビデオ画面の向こうで玲那が興奮気味にそう言った。


しかも、今はパートに行ってるからいないけど、絵里奈はもっと興奮してる。


山下典膳やまもとてんぜんさんのドールに沙奈子ちゃんのドレスを着せた画像をたくさんアップしてるブログがあるんです! それがまた素敵で……!」


だって。


玲那もそこまでじゃないけど、


「山下典膳さんのドールに着せるのが一番似合うって評価がダントツかな」


すごく嬉しそうに言う。


だけど当の沙奈子はあまり興味がないらしくて、褒められると嬉しそうにはするんだけど、いい気分にはなるみたいなんだけど、それだけだった。この子にとってはドレスを作れることが嬉しくて、そのドレスが評判になるとかそういうのは二の次らしい。


本当、沙奈子らしいな。


でも、それでいいと思う。


ただ、周囲はそれでは放っておいてくれなくて、


「沙奈子ちゃんのドレス、また買えませんでした~!。悔し~~~っ!!」


僕が会社に行くと、洲律すりつさんがそう言いながら迫ってくるのが恒例行事みたいになってた。


冬休み中に集中してやったから、連続して二着のドレスを出品できたんだけど、その二着とも、出品した瞬間に売れてしまって、そのどちらも洲律さんは手に入れられなかったそうだ。それ以前からのと合わせて四回連続でダメだったらしい。


「私がオーダーした分があるからいいんですけど、でも、他のも可愛くて可愛くて、買い占めたいくらいなんですぅ~~っ!!」


悔しそうに地団太を踏むたびに彼女が着ているドレスがバッサバッサとはためいて、風さえ起こってた。


そこまで楽しみにしてくれてるんだなあと、苦笑いになりながらも感謝する。


ちなみに、山下典膳さんの人形に沙奈子のドレスを着せて写真を撮ってアップしてるっていうブログの一つは、洲律さんのものなんだって。


だから鷲崎わしざきさんが、


「絶対に沙奈子ちゃんと知り合いだとか書いちゃダメだよ!。沙奈子ちゃんのことに触れるのもダメ!。これはファンとしてのマナーだから。分かった!?」


って、釘を刺してくれてる。


「えぇ~!、そんなあ……!」


洲律さんが不満そうに声を上げても容赦はなかった。


「なんて言われてもダメなものはダメ!。それが守れないなら注文は受けさせないからね!」


「お慈悲を!、なにとぞお慈悲を~!」


「だまらっしゃい!。ハウス!!」



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