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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十五 美嘉編 「負の連鎖を断ち切れない」

一月十三日。日曜日。快晴。




今日もいつも通りに千早ちはやちゃんと大希ひろきくんが料理を作りに来る。


もちろん星谷ひかりたにさんも二人の付き添いでやってくる。


本当ならもう、付き添いは必要ないそうなんだけどね。なにしろ四月からは中学生っていう子供たちだし。


それでもついてくる星谷さんを『過保護だ』って言う人もいるかもしれないけど、千早ちゃんも大希くんも、『保護されてる』っていう風には思ってないみたいだ。


『仲のいいお姉ちゃんが一緒に遊びに出掛けてくれてる』


って感じらしい。


これがもし、二人が重荷に感じてるようなら、過保護、いや、『過干渉』ってことになるとしても、そうじゃないから何も問題はないと思う。


だって星谷さんは変に口出しとかせずにただ黙って見守ってるだけだから。あくまで、何か万が一の時にはすぐに対応できる位置にいるためのものなんだって。


そういう考え方がすごく彼女らしいと思う。


それはさて置き今日は、鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんもお昼を食べにくる。


結人くんも完全に落ち着いたからもう大丈夫だろうってことだった。


それまでは、彼がいろいろ不安定になってるかもしれないし、負担になったらいけないっていうことで様子を見てたんだ。


でも傍で彼を見てる鷲崎さんの実感としてもう大丈夫そうだってことでね。


星谷さんは、そんな結人くんに対しても、変に口出しはしない。


ロクに挨拶もなく余所余所しい態度で黙って部屋に入ってきても、黙って見守ってるだけだ。


「私は彼にとっては本当にただの『赤の他人』ですからね。そんな私にあれこれ言われていい気がしないのは分かります」


とも言ってたな。


これは、星谷さん自身の失敗から学んだそうだった。


他人に対してあれこれ口出しして反発を招いて関係が拗れるっていう。


彼女の場合は、『言われて嫌だった』立場じゃなくて、やたらと干渉して反発された側の立場としての反省から得たものだってことらしい。


そうやって反省できるというのが本当に立派だと思う。自分を正しいと思い込んでる人って、反省しないから。間違ってるのはいつだって他人の方で、自分は間違ってないと思ってるから、反省する理由がないんだろうな。


なのに星谷さんは、自分が間違ってたというのを認める勇気が持てた。


これは本当にすごいことだと思う。


自分の間違いを認めるというのは、勇気がなくちゃできないことだ。痛みが伴うから。


それまで自分が正しいと信じてきたことを疑わなくちゃいけないから。


それができなくて負の連鎖を断ち切れない人も少なくないんだろうな。



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