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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十三 美嘉編 「結果がどうあれ」

一月十一日。金曜日。晴れ。とても寒い。




いよいよセンター試験が近付いてきてる。


と言っても、関係あるのは田上たのうえさんだけなんだけどさ。


イチコさんは推薦入試で早々に合格を決めてしまったし、星谷ひかりたにさんは『特色入試』っていう推薦入試の一種を受けることになるけど、それは本番が二月の終わり頃で、最終的に結果が分かるのは三月の下旬なんだって。


もっとも、彼女の場合は『ほぼ合格間違いなし』とお墨付きをもらってるらしいけど。


「いや~、そういうのってフィクション的にはむしろ『フラグ』なんだけど、ピカの場合はまるで不安がないね」


とは、玲那の弁。


実際、星谷さん自身もまるで余裕の表情だ。まったく気負ってる様子がない。なにしろ、


「ダメだったらそれはそれでいいんです。それを経験として次また挑戦するだけですから」


と、ダメだった時のこともしっかりと想定してるって。


それに比べて、田上さんは、正直言ってかなりプレッシャーを感じてるらしい。


田上さんは、大学に進学が決まったら家を出て一人暮らしをするそうだ。とにかく今の家から早く出たくて仕方ないんだって。


その気持ち、僕にも覚えがある。


僕も自分の家から早く逃げ出したくて勉強を頑張った、おかげで、中堅どころとはいえ一発合格を極められて家を出られて本当にホッとしたんだ。


だから田上さんにもそうなってほしいと思う。


もちろんそれは星谷さんもそう思ってて、田上さんの勉強に協力してきたらしい。


仕事が終わって沙奈子を迎えに山仁やまひとさんの家に行っていつものように二階に上がると、星谷さんが田上さんの勉強の最終チェックをしてるところだった。


「今さら焦ってもそれはむしろリスクになるだけです。フミの実力は十分にあります。それに、大学の合否に関係なく家を出ればいいと思います。私も協力しますから」


「ありがと、ピカ……」


田上さんの緊張を少しでもほぐそうとしてるらしい星谷さんに対して、でもやっぱり田上さんは少し青褪めた感じの表情だった。


だけどその気持ちも分かる気はする。大学受験を控えた時の僕もこの感じだったろうな。


励ましてくれるのは嬉しいけど、本人としてはやっぱりいろいろキツイんだ。


これは、試験が終わるまでどうしようもないと思う。


僕としては、結果がどうあれ、彼女のことを受けとめてあげたいと思う。


『家族』として。


彼女が必要としてるのは、ありのままの自分を受け止めてくれる家族なんだ。


それは分かってる。


でも星谷さんも、当然、分かってるんだろうな。



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