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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十一 美嘉編 「そのための手本が」

一月九日。水曜日。昨日の夜から降り出した雨は、僕が出社する頃までは降ってたけど、会社に着いてからしばらくしてやんだみたいだった。




しみじみ、人と人との関係って、繋がっているんだなあって思う。


沙奈子を大事にしてくれるから僕は大希ひろきくんや千早ちはやちゃんのことも大切にしようと思うし、僕が大希くんや千早ちゃんのことを大切にしようと思ってるから星谷ひかりたにさんも僕たちのことを大切にしようとしてくれる。


これが一方的に僕たちが星谷さんを当てにして利用しようとしてたら、ここまで力になってくれることもなかったんだろうなって気がしてる。


そして、他人を攻撃するっていうのは、そういう繋がりと悪い方向へと向けることなんだろうな。


攻撃的な人って、いつそれを誰に向けるか分からないから、近くにいるとすごく不安なんだ。できれば関わりたくない。それが『偽らざる気持ち』って感じ。そういう人はたとえ困ってても、積極的に力になりたいとは思えない。


力になるとしても、すごく打算的な、メリットっていうものがないとそう思えない気がするんだ。


たた、一口で『メリット』と言っても、いろんなものがあるかもしれないけどね。


その一つとして、星谷さんももちろん、彼女にとってメリットになることがあるから僕たちの力になってくれてるのは間違いないんだけど、なんて言うか、僕にとっても嫌なメリットじゃないっていうのも事実なのかな。


それは僕たちが、誰かに対して攻撃的にならないから、星谷さんにしても安心して力を貸してくれてるんだろうなって思えるんだよ。


せっかくそういう人が傍にいるのに、自分が攻撃的になることで警戒されたり距離を置かれたりしたら悲しいよ。


そして結人ゆうとくんも、他人を攻撃しないことで、何か困ったことがあった時にはみんなが助けてくれると思うんだ。


こういう繋がりを自分で台無しにするなんて、本当にもったいない。


だけど星谷さんも、イチコさんたちと出逢うまでは、他人に対して攻撃的な人だったって聞いた。今じゃまったく想像もつかないけど、イチコさんたちに対しても威圧的で横暴な感じで接してたって。


彼女がそんな人のままだったら、僕は大希くんとの仲も応援できなかっただろうな。


それどころか、彼に関わって欲しくないってさえ思ってしまう気もする。


少なくともこんなに素直に、


『上手くいってくれたらいいな』


とは思えなかった気がして仕方ない。


結人くんも、星谷さんみたいになっていってくれたらきっと幸せになれるんじゃないかな。と言うか、彼が幸せになってくれるように協力したいって僕も思えるんだ。


そのための手本が星谷さんだっていう気もするんだ。



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