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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百四十 美嘉編 「上手に関わることは」

一月八日。火曜日。曇り。




結人ゆうとくんは、少なくとも自分から攻撃はしない子だった。


でも、『攻撃的な雰囲気』を発してるだけでもそれに反応してしまう人は確かにいて、それを『挑発』だと受けとってしまう人は確かにいて、それでケンカになってしまったことが以前はあったんだって。


だけど今の学校には彼のそういう態度を『挑発だ!』と受け取ってケンカを売ってくる子はいなくて、と言うか、ケンカになる前に先生が指導してくれて、それで大きな問題にはならずに済んできた。


これは彼の努力じゃなくて、彼の周りの人の努力だ。


けれど、それに加えて彼自身も、そこで止まったから問題は大きくならなかった。そこで彼が止まることなく他人を攻撃していたら、きっと今の穏やかな毎日はなかったと思う。


そういう意味では、彼も、自分から攻撃することをやめたんだ。だからこそ今がある。


『自分は幸せじゃない』と思ってる人は、


『自分は嫌な目にばっかり遭ってる』と思ってる人は、


勇気を出して自分から誰かを攻撃するのをやめてみたらどうかな。


もちろんそれですぐ状況が良くなる訳じゃないと思う。自分が今までしてきたことが当分の間は影響して嫌なことが起こるかもしれない。


だけどそれは自分が招いたことだからある程度は仕方ないかもしれない。


そこを乗り切れば良くなっていきそうにも思えるけど、そこでキレてまた誰かを攻撃すれば、結局、元の木阿弥なんだろうな。


その点、結人くんは、鷲崎わしざきさんが傍にいてくれたおかげで、そういう部分が和らげられた気もする。


彼女と出逢えたことは、彼にとって本当に幸運だったんじゃないかな。


『地獄に仏』


っていうのは、こういうのを言うのかなとも思った。


そんな彼の周りには、星谷ひかりたにさんもいる。鷲崎さんや僕だと力が及ばないことでも、彼女ならきっと力になってくれるだろうな。


もっともそれも、沙奈子が結人くんの近くにいるからっていうのが一番の理由だけど。


結人くんが辛い思いをすれば沙奈子が悲しむ。


沙奈子が悲しそうにしてたら大希ひろきくんも悲しむ。


だから星谷さんは結人くんのことを放ってはおかない。


人間関係ってそういうことなんだろうなってすごく思う。


結人くんは沙奈子のことは特に攻撃しなかった。


上手に関わることはできなかったかもしれなくても、少なくとも攻撃的じゃなかった。


そのことが、今後、もし何かあっても彼を救うんじゃないかな。


結人くんは、沙奈子を大事にしようとしてくれてる。分かりやすく優しくはしてくれてなくても、それが伝わってくるんだ。



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