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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百三十九 美嘉編 「現在進行形で問題は」

一月七日。月曜日。晴れ。




今日から新学期。そして、沙奈子たちにとっては小学校最後の三ヶ月が始まる。


「じゃあ、気を付けて行ってきてね」


朝、出勤の時に沙奈子にそう声を掛けて、挨拶を交わして、家を出る。


「いってらっしゃい」


自転車置き場に行こうとしたところで、アパートの二階からやっぱり鷲崎わしざきさんが見送ってくれた。


もちろん結人ゆうとくんの姿はないけど、彼も今ではすっかり落ち着いた様子になってる。生意気そうには見えるんだけど、やっぱり落ち着いてるんだ。以前に比べると。


なんて言うか、


『野生の猛獣みたいな危険な気配』


を感じなくなってきてるのかな。


彼が他人に対して攻撃的でなくなっていくことが、彼が幸せになる確実な道だと思う。


他人を傷付けようとする人を認めてくれるほど、この世の中は甘くない。そんなことをしようとすれば自分も他人から傷付けられる。反撃される。


見てれば分かるよね。たとえ言葉だけでも他人を傷付けようと攻撃する人は、相手からも反撃されたり、それを見ていた他の人からも非難されたりして、結局、自分も余計に嫌な目に遭うんだ。他人を攻撃することで憂さを晴らそうとしたのかもしれないけど、憂さ晴らしどころか、ストレス発散どころか、逆にストレスを増やしてるだけだよね。


館雀かんざくさんがまさにそれだったと思う。


イチコさんたちは反撃はしなかったかもしれない。ただ受け流していただけだ。でも、そうやって受け流されてますます自分が惨めになっていったのか、館雀さんのイライラは増したようにしか見えなかった。


他人を攻撃するっていうのは、そういうことなんだろうな。


それをやめた方が実はよっぽど平穏になれるのに、自分が攻撃をやめることで他人からもっと攻撃されるんじゃないかっていう不安から抜け出せないでいるのかもしれないな。


実際には、自分が攻撃的になることで、本当なら敵でもなんでもなかった人をわざわざ敵に回してしまうんだ。


館雀さんみたいに。


イチコさんたちは攻撃するような人じゃなかった。少なくとも自分からそんなことをする人達じゃない。それなのに館雀さんはイチコさんたちを攻撃して、それで自分が嫌な気分になったんだ。


本来ならなかったはずの『イライラ』を、自分で作ってしまったんだ。


どうしてそれに気付かないんだろう。


どうしてわざわ墓穴を掘るようなことをするんだろう。


そういえば、田上たのうえさんの弟さんも、ネットで他人を攻撃してそれで問題が拗れたって話だったな。


あれ以来、相手から訴えられたという話はまだないけど、星谷ひかりたにさんが言うには、


「相手が証拠集めをしているだけの可能性が高いですね」


ってことだった。


だからまだ、現在進行形で問題は続いてるんだろうな。



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