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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百三十八 美嘉編 「ますますゆるぎないものに」

一月六日。日曜日。晴れのち曇り。一時雨。




三日四日と絵里奈や玲那と一緒にいたけど、それはそれ、これはこれということで、実は昨日も会いに行った。


人形のギャラリーは今日からで、昨日はまだ開いてなかったから、絵里奈がパートの帰り道で見付けたという喫茶店で会うことになったんだ。


でもそこにも、絵里奈や沙奈子が大好きな人形がいくつも飾られてて、『ああ、なるほど』と思わされたな。


実は他にも馴染みの喫茶店とかがあるんだけど、そこでは絵里奈の顔は、お店だけじゃなくて常連のお客にも覚えられてて、しかも玲那もしょっちゅう一緒だったのもあって、いくら『別人メイク』をしてても、絵里奈だってことを気付かれる可能性があったし、絵里奈が気付かれれ当然、玲那のことも気付かれる可能性があったから、そういう店には一切近付かないようにしてた。


それらの喫茶店とかの中にも人形を置いてる店があって、そこに行けなくなったことは、本音を言えば残念だとは思ってたらしい。


でも、沙奈子や玲那のためだと思えば我慢もできる。できるけど、残念だったこともやっぱり事実で、だから今回の喫茶店を見付けられたのは、


「本当に嬉しくて、飛び跳ねそうになりました」


だって。


なのに、店に入ると話題は結局、星谷ひかりたにさんのこと一色になってしまった。


よっぽど、旅館の時の彼女が印象的だったらしい。


特に、彼女の表情が、女性らしい柔和さを増してる気がするって。




そして今日、新年一回目の料理作りで、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんを連れて星谷さんがやってきた。


「旅館に誘っていただいてありがとうございました。おかげで僕たち家族も久しぶりにゆっくり一緒にいられました」


と、改めてお礼をする。


すると星谷さんは、やっぱり、


「どうぞお気になさらないでください。私のためにしたことですから」


と言ってくれた。


それはいつもの謙遜だったと思う。だけどその時の表情が、これまでよりも柔らかかった気がした。


絵里奈や玲那が言ってたのはこれだったんだ。


いつも冷静で、真面目で、ともすれば冷たい人に見られがちだった彼女がこういう表情を、大希くんと接してる時以外でも見せるようになってきたっていうことなのかな。


それが単純にいいことなのかどうかは僕には分からないけど、少なくとも僕はそんな彼女の表情を、魅力的だと感じた。


『素敵だな』って思ったんだ。


彼女は素晴らしい女性だ。


これまでだって疑いようのない事実だったそのことが、ますますゆるぎないものになっていくのを感じたのだった。



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