表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
936/2601

九百三十六 美嘉編 「ずっとこうしたかった」

一月四日。金曜日。快晴。




「いや~、今回もなかなか見ものでしたな♡」


昨日、みんなで一緒にお風呂に入った時、星谷ひかりたにさんはやっぱりゆでだこみたいに真っ赤になって照れまくってたんだって。


玲那はそれが楽しかったって喜んでた。


だけどそれは決して星谷さんをバカにしてるわけじゃないのが分かるから、僕も、


『しょうがないなあ』


とは思いつつも別に諫めたりはしなかった。


それに大希ひろきくんも、


「楽しかったね」


って言ってて、星谷さんがそれを喜んでいたのも分かったし。


星谷さんが嬉しそうにしてるのが何より僕も嬉しかった。




ところで、今日は、実を言うと僕の会社の新年初仕事。


だから僕は、朝、このまま会社に行く。


「すいません。本当は二日三日と予約が取れればよかったんですが……」


仕事に行くのに必要なものは、昨日、家から持ってきている。それで用意をしてた僕に、星谷さんがそんな風に声を掛けてきてくれた。


「いえいえ、たまにはこういうのも悪くないですよ。それにこの旅館はすごく落ち着けて休めるから、なんか自宅から行くのとそんなに変わらない気がします」


そう応えさせてもらったのも、僕の本音だった。


「じゃ、いってきます」


「いってらっしゃい」


沙奈子との、頬と額へのキスの挨拶は、今も続いてる。そしてそれは、ここにいるみんなが知ってる。だからいつも通りに挨拶を交わした。


誰もそれを嗤ったり冷やかしたりしない。当たり前のこととして受け入れてくれてる。


さらに今日は、絵里奈とも、


「いってきます」


「いってらっしゃい」


と、こちらは軽くだけど本当に『口づけ』を交わした。


するとさすがに、


「お~♡」


って感じで波多野さんと千早ちはやちゃん揃って声を上げた。その隣では、田上たのうえさんが照れくさそうに顔を覆いながらも微笑んでる。


その一方で、イチコさんと大希くんは平然としてたし、星谷さんは何となく羨ましそうな目で見てた気がする。


それから今日は、本当に久しぶりに、玲那とも、沙奈子のと同じ挨拶を交わした。


すると玲那は、潤んだ感じの瞳で僕を見て、


「…ずっとこうしたかった。滅多にできないのがホントに悔しい。だけど今日はできて嬉しい……」


って……。


僕だけ先に旅館を出ていくことになるのは残念だけど、でも、こうして玲那を喜ばせることができたのなら、それで十分だ。


長いように感じてた玲那の執行猶予期間も、半分を過ぎた。毎日を確実に送っていれば、こうやって時間は過ぎていってくれる。


僕は改めてそれを感じてた。


そんな僕たちを、星谷さんは、真一文字に唇を結んで真っ直ぐに見詰めてたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ