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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百三十三 美嘉編 「その程度の分別は」

『ヒロ坊くんは本当に私と一緒のお風呂でいいんですか?』


星谷ひかりたにさんにそう聞かれても大希ひろきくんはまったく平然と、


「いいよ。みんな一緒の方が楽しいし」


って、欠片ほども照れてるとか意識してるとかっていう気配を見せずに応えてた。


しかも、沙奈子も千早ちはやちゃんも、大希くんと一緒にお風呂入ることにまったく抵抗を見せない。彼が性的なことを全く気にしてないのが伝わってるからなんだろうな。


ホントは意識してるのに平気なフリをしてるとかそういうのじゃまったくないのが分かる。


彼にとっては本当に、特別なことでも何でもないんだ。


『男女の性差』っていうことが。


だからって、極端な『男女平等』を唱えてるのかって言ったらそういうのでもないのは確かだ。


たぶん、大希くんは、


『男性と女性は違う』


っていうのを当たり前のこととして受け止めてるんだろうな。


そう、『違うということ自体が当たり前』だから、違ってることを何か特別なものであるかのように捉える必要がないんだと思う。


その感覚は、僕にもすごく共感できる。


男性と女性は違っているということ自体が当たり前なんだ。そういうものなんだ。だからできることにも少し違いがあって当然なんだ。


お互いに『違ってる』というのを認めて、その違いをお互いに尊重することができるようになって初めて、本当に対等になれると思うんだ。


『対等』っていうのは、『相手と全く同じ』っていう意味じゃないと、絵里奈と結婚してみて実感できた気がする。僕と絵里奈は違う。


得意なことが違う。苦手なことが違う。できることが違う。できないことが違う。


すごくたくさん違うところがある。


絵里奈には赤ちゃんは生めても、僕は生めない。


だけど、絵里奈は、沙奈子にとっての『一番』になれない。沙奈子にとっての一番は、今でも僕なんだって。


絵里奈のことはもちろん大好きでも、『お母さん』だと思っていても、やっぱり僕とは違うって。


そして絵里奈も、それを知ってる。それを知った上で、沙奈子を愛してくれてる。


『僕のことを一番に想ってる沙奈子』を、愛してくれてるんだ。


人間は、一人一人が違う。


性別も、その『違い』の一つに過ぎない。


『相手は自分とは違う人間だ』


ということを認めて初めて対等になれるんだと僕は知ったんだ。


大希くんは、そういうのを自然と理解してるんだろうな。山仁やまひとさんがそう考えているから、それを自然と学び取っていったんだと思う。


もっとも、だからと言って見ず知らずの女性も入ってる公衆浴場で女湯に入ったりはしないし、電車の『女性専用車両』に乗り込んで、


『男女平等だからこれが当然だ!』


なんてことを言ったりもしない。


その程度の分別はわきまえてるからね。



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