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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百三十二 美嘉編 「ヒロ坊くんは本当に」

「お~! 着いた~!!」


「到着、到着ぅ~!」


三十分ほど歩いて旅館の前まで来ると、千早ちはやちゃんと波多野さんがそう声を上げた。玲那もガッツポーズをしてる。


僕も無事に着けてホッとしていた。


絵里奈と星谷ひかりたにさんが受け付けでチェックインを済ませ、さっそく部屋に上がると、僕と沙奈子と絵里奈と星谷さんとイチコさんと田上たのうえさんは座り込んで一息ついたけど、玲那と千早ちゃんと大希くんと波多野さんは、さっそく、お風呂の方を覗きに行ってしまう。


「元気だなあ…」


思わず漏れた僕の呟きに、イチコさんと田上さんが、


「うんうん」


と頷いてた。


すると、


「いらっしゃいませ」


って声を掛けながら仲居さんが入ってきた。玲那の友達の木咲きざきさんだった。


「もう早速仕事ですか?」


自然と口を吐いて出てしまった僕の問い掛けに、


「はい。今年はもう元日から出ずっぱりです」


だって。


そうなんだ。まあ、今時、元日から開いてるスーパーもあるし、コンビニとかはそれこそ年中無休だから仕事してる人も珍しくないけどね。


そこに玲那が戻ってきて、


「お~!、心の友よ♡」


とかなんとか。


そしたら木咲さんは、ニッコリと笑顔になって、


「はい、ありがとうございます。お客様。従業員を代表して、心より歓迎いたします。


さらりと返した。


「んもう!、ツレナイお方…!」


なんてやり取りを。


さすがにもう、仕事とプライベートとは分けることにしてるらしいね。


「何度も来ていただいておりますのでよく存知かとは思いますが、何か御用があればお気軽にお声掛けください」


そう言って部屋を出ていく時、彼女はまた笑顔になって小さくひらひらと手を振ってた。たぶん、玲那に向けてのせめてもの友達としての挨拶だったんだろうな。


そんなこともありつつ、まずはお昼を戴くことに。


もう何度も食べてるからどんな感じの料理か分かってるし、安心して食べられる。


「美味しいね」


「ね~♡」


って、大希ひろきくんと千早ちはやちゃんが。


「そりゃミホっちが勤めてるとこのんだから美味いにきまってんじゃん」


とは玲那の弁。


「理屈は意味不明だけど本当に美味しいね」


と絵里奈が微笑む。


「このレベルを維持するのは意外と大変だとは聞きますが、努力なさってるのは分かりますね」


星谷さんは料理を堪能しながらも独自の目線で見てるのが分かるな。


イチコさんと田上さんも黙々と食べてるし、沙奈子も箸が進んでるのが分かる。


そうして美味しい料理に舌鼓を打って、いよいよお待ちかねのお風呂だ。


すると星谷さんがやけにそわそわしてるのが分かった。もう顔も赤い。だけど本人としてはきっとなるべく冷静に振る舞おうとしてるんだろうな。


「ヒロ坊くんは本当に私と一緒のお風呂でいいんですか?」


なんて、大希くんに確認してた。


確かに、もう四月には中学生になる大希くんが女の子と一緒にお風呂だなんて、普通に考えたらとんでもないことだって言われかねないもんね。



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