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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百二十九 美嘉編 「理想の家族」

山仁やまひとさんの家に着くと、丁度みんなも外に出てきた。たぶん、玲那が、


「今から行くよ」


って連絡してくれたんだと思う。


僕は時間通りに行けばそれでいいと思ってるからついつい連絡とかはしないんだけど、千早ちはやちゃんとは特にアニメの話とかで盛り上がれるから、結構頻繁に連絡を取り合ってるみたいなんだ。


あと、波多野さんとも割と気が合うみたいで、しょっちゅうやり取りしてるみたいだ。


こういうところは僕とは違うなあ。


だけどそれでいいんだろうな。僕と違ってるからいいんだ。僕と同じである必要なんてまったくない。


玲那もそうだし、沙奈子も絵里奈も僕とは違ってる。


違ってるということを認めるのが大事なんだろうな。


それができないと、自分が他人と同じようにできないことを認めてもらいたいと思うことも許されない気がする。




なんてことを頭の隅で考えつつ、


「おはようございます」


と挨拶を交わした。


それからみんなで駅に向かって歩いて、電車に乗る。先に初詣に行くためだ。


神社の近くで絵里奈と玲那とも合流して、参拝に向かう。


もう一月も三日だけど、さすがに初詣客は多かった。


「はぐれないように気を付けてね」


沙奈子と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんにそう声を掛ける。


特に大希くんは、今でも三年生に間違われることもあるくらいに体が小さいから、見失わないようにしなくちゃ。


すると星谷さんも、


「もしはぐれても、私が必ず見付けます。安心してください。ですが、気を付けるに越したことはありません」


と、特に大希くんに向かって言ってた。


そうだね。星谷さんにとっては大希くんのことが一番大事だもんね。


でもそれを、千早ちゃんも認めてくれてるみたいだ。


「ピカ姉はホント、ヒロのことになると心配性だなあ♡」


って笑ってた。


千早ちゃんにとっては、星谷さんが一番大切な人のはずだった。


四年生の夏頃までは、大希くんをめぐって沙奈子にきつく当たった彼女だったけど、それは『恋心』とかじゃなくて、どちらかと言えば、


『自分の可愛い弟を取られる…!』


っていう意味の嫉妬だったみたいだ。


だけど、星谷さんがお姉さん代わりになってくれることで大希くんにはそれほど拘る必要がなくなって、今ではむしろ、大希くんに想いを寄せてる星谷さんのことを応援してるくらいなんだって。


だから千早ちゃんは、『理想の家族』が欲しかっただけなんだろうな。


それが手に入ったんだから、もう焦る必要もないっていうことなんだろう。


そういう心の余裕が人間には大事なんだってすごく感じる。


僕は自分の家族に、沙奈子や絵里奈や玲那にそういう心の余裕を持てるだけの安心感を与えられているだろうかっていうのを、いつも心掛けているんだ。



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