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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百二十八 美嘉編 「自分が実際に学んだことでないと」

一月三日。晴れ。




「うしゃしゃしゃ♡ さあて、ピカのあられもない姿を拝みにいきますか~♡」


朝、ビデオ通話の向こうで玲那が浮かれてた。


今日はあの旅館に、僕たち家族と、星谷ひかりたにさん、大希ひろきくん、千早ちはやちゃん、イチコさん、波多野さん、田上たのうえさんの九人で一泊しに行くことになってる。


そこでまた、星谷さんが大希くんにメロメロになってる姿を見られるのが楽しみだと玲那は言ってるんだ。


「はしゃぎすぎだよ。まったく」


僕も玲那の様子に呆れながらも、何となく興味はそそられてるけどね。


一方、沙奈子はそういうことはあまり気にしないけど、あの大きな風呂に入れるのは楽しみのようだ。


絵里奈はただ微笑んでる。その姿がまた『お母さん』って感じがして、板についてきた気がするかな。


掃除とか洗濯とか、いつもの家のことをざっと済ませてから、


「じゃあ、いきますか」


と部屋を出た。


「いってらっしゃい。気を付けて」


玲那とやり取りしてたらしい鷲崎わしざきさんが二階の廊下から見送ってくれた。


結人くんの姿はさすがにない。


できれば二人にも参加してほしかったんだけど、結人くんがまだそこまでは打ち解けられてないからね。一緒に出掛けられるようになるまではまだまだかかりそうだ。


だけど焦る必要はないと思う。彼のことはゆっくりとやっていくことにしてるから。


鷲崎さんにも、


「慌てずに行きましょう。彼のペースを大事にしたいですから」


と言ってある。


「はい…。こんなにみんなに大切にしてもらえて、結人は幸せ者です……」


鷲崎さんが目を潤ませてそう言ったけど、僕は、


「それは鷲崎さんが僕たちを大切にしてくれてるからだよ。一方的に大切にできるほど、僕たちは心が広くないからね」


とは言わせてもらった。


たぶんそうなんだと思う。


見返りを求めて親切にするというのは違うとも思うけど、だからといって『無償の愛』を他人にまで無制限に振りまくというのも、普通の人にはできないことじゃないかな。現実的じゃないと思うんだ。


お互いに助け合うから、そんなに無理せずにできるっていう気がする。だからどうしても相手が限られるんだよ。


『力になりたいと思える相手』


だけにね。


でも、みんなが自分の身近な人をそうやって大切にできれば、結局、ほとんどの人が必ず誰かから大切にされてるってなりそうな気はするんだ。


そうやって、


『人を大切にするっていうのはこういうことだ』


っていうのを実際に経験して学ぶことができるんじゃないかな。


たぶん人間は、自分が実際に学んだことでないと実感を持ってすることはできないって気がしてる。


僕が今こうしてるのだって、山仁やまひとさんや星谷ひかりたにさんから学んだことだからね。



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