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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百二十六 美嘉編 「あけましておめでとう」

一月一日。火曜日。曇り。




「あけましておめでとう」


「おめでとう」


「おめでとうございます」


「おめっとさ~ん♡」


新年の朝。大晦日だからって別に夜更かしするでもなくいつも通りに寝た僕と沙奈子と絵里奈と玲那は、でもいつもと違って『新年の挨拶』を交わしてた。


さすがにこのくらいはね。


それはそれとして、今年の元旦は思ったほど寒くなかった。


予報でも例年よりは暖かい日がしばらく続くみたいなことを言ってたかな。あまり寒さが厳しいとさすがに辛いから、それが少しでもマシなら助かる。


「今年は平穏な年になってくれるといいんだけど」


僕がそう言うと、玲那が、


「ダメダメ、お父さん。そういうのはフラグだよ」


なんて言ってたけど、その顔は笑ってた。


僕がフラグとかなんて気にしないし、実際、そういうのは関係ないって玲那も知ってるからね。


『ネタ』として言ってるだけなのは分かってる。


だから僕も、


「それは大変だ!。気を付けなくちゃ」


と笑いながら返させてもらった。


そんな僕と玲那のやり取りを、沙奈子と絵里奈が穏やかな表情で見てくれてる。


三日に星谷ひかりたにさんたちと一緒に旅館だから、今日明日は家でのんびりと過ごす予定だ。初詣とかも三日に行く。


朝食は、いつもと変わらない感じで済ませた。


さすがにおせち料理までは作ってられなかったからね。


でも、お雑煮は作る予定だ。そのためのお餅も買ってある。


ちなみに、大晦日の夜は、一応、年越しそばを食べた。もちろん鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんも一緒に。


その時、鷲崎さんは、結人くんに向かって、


「結人。大晦日におそばを食べるのは、『細く長く生きられますように』っていうことなんだよ」


って説明してた。


すると玲那が、


「そばって切れやすいから、『今年一年の厄を断ち切る』っていう意味もあるって言われてるね」


と補足した。


それを受けて鷲崎さんが、


「本当に…、嫌なこととか辛いこととかを断ち切れたらいいね」


しみじみといった感じで呟いた。


たぶん、結人くんの過去のことを言ってるんだろうなって感じたりもする。


でも、そう言いたくなる気持ちも想像できるかな。


彼はもうこれまで、十分以上に苦しんできたはずなんだ。だからもう本当にこれ以上は必要ないと思う。


神様とかがもしいるんなら、それこそいい加減にしてほしいって僕も思うんだ。


彼はもう、自分から攻撃的になることはたぶんない。


これまでも彼は自分から積極的に攻撃的になることはなかった。それをこれからも続けられればいいだけなんだろう。


その上で、もう危険なことはしないでほしいんだ。



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