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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百二十五 美嘉編 「これであの件は完全に」

十二月三十一日。月曜日。曇り。




大晦日。いよいよ今日で今年も終わりだ。


主に鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんのことでいろいろあった一年だったなと思いつつも、部屋でのんびりと過ごす。


お昼には鷲崎さんと結人くんも食べに来てくれて、カレーを味わってもらえた。


結人くんについては、基本的に相変わらず愛想はない。ただ、沙奈子がカレーを作ってる時に立ち上がって、トイレに行ったと思ったら戻ってきた時に沙奈子のそばに寄って、何かボソッと声を掛けたのが分かった。


それに対して沙奈子も穏やかな表情で頷いてたんだ。


「沙奈子、さっき、結人くんは何て言ってたの?」


二人が帰った後、なるべく何気ない感じで尋ねてみる。


すると、


「…『悪かった』って。たぶん、この前のことだと思う……」


とのことだった。タイミングを逸して沙奈子にはまだ謝れてなかったから、今になったんだろうな。本当に不器用な男の子だ。


「そうか。じゃあもうこれであの件は完全に終わりだね」


僕の言葉に、


「うん…」


と、沙奈子もどこか嬉しそうに頷いてくれた。


この子にとって彼は、ある意味では『写し身』みたいなものなんだと思う。似たような(と言っても彼の方がさらに過酷だったんだろうけど)境遇にあって、でも今では鷲崎さんという『お母さん』を得て、僕と沙奈子の時よりはかなり時間がかかってしまったけど本当の親子のようになれて、沙奈子としてもホッとしたんだろうな。


それはもちろん、僕も同じだった。


これからが彼の人生の本番だと思う。まだ完全にゼロにまでは戻れていないとしても、少なくとも今より悪くなることはないはずだから。


彼と鷲崎さんが幸せでいられるように、僕たちも協力する。僕が、山仁やまひとさんや星谷ひかりたにさんに助けてもらえたように、僕がしてもらえたことを今度は二人に対してさせてもらうんだ。


もちろんこれまでもそうしてきたつもりだけど、これからもっていう意味で、ね。




夕方。今年最後の『会合』のために山仁やまひとさんのところに行くと、星谷さんさんが、


「その後の、鷲崎さんと鯨井くじらいくんの様子はどうですか?」


と尋ねてきた。だから言ったんだ。


「はい。今日、沙奈子にも『悪かった』と言って謝罪があったそうです。これで、僕としてはあの一件は完全に終わったと考えています」


って。すると星谷さんも、クールな感じなんだけどどこかホッとしたような印象のある表情で、


「そうですか。それは良かった。大きな怪我もなく終えられたことについてはこれ以上ない幸運だと思います」


と応えてくれたのだった。



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