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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百二十四 美嘉編 「身勝手にも程がある」

十二月三十日。日曜日。曇り。




昨日は、当然、絵里奈と玲那にも会いに行った。絵里奈のパートは明日までで、年明けは四日までが休みだそうだ。だから、星谷ひかりたにさんは三日四日と予約してくれてる。


三日にみんなで初詣に行って、それから旅館に行く予定になってる。


「いや~、楽しみですなあ」


ゆっくりと、家族四人で部屋で寛いでる時に、玲那がそう言った。旅館についてのことなんだけど、でもちょっとニュアンスが違うのを僕は察してた。


なにしろ、すごく悪戯っぽくニヤニヤしてたから。


「さては、星谷さんがまた大希ひろきくんと一緒にお風呂に入った時の反応を楽しみにしてる感じだな?」


そう指摘すると、


「あったりまえじゃん!。はっきり言ってそれが一番の楽しみだよ!。あのクール系美少女のピカが、顔を真っ赤にして鼻血噴いてぶっ倒れたりするんだよ?。こんな面白いイベントが他にあるかって話だよ!」


だって。


失礼なこと言ってるなあと思いつつも、僕自身、あの超人のような星谷さんの思わぬ一面が見られることには確かに興味もそそられてる。


「だけどさすがにもう、鼻血を出すことはなくなってるみたいだけどね」


ちょっと困ったように微笑みながらそう言ったのは絵里奈だった。彼女としては、星谷さんの恥ずかしい姿をバカにしてはいないんだけど面白がってる玲那のことを、ちょっと申し訳なくも思ってるんだろうな。


だけど、当の星谷さん自身がそれを恥ずかしながらもそんな姿を僕に見られるのを嫌がってはいないのが分かるから、あんまり玲那をたしなめたりもしない。


星谷さんは、そういう恥ずかしい一面も僕たちには包み隠さず明かしたいと思ってくれてるらしいんだ。


彼女自身が言ってた。


「私は決して完璧な人間ではありません。間違ったこともしてしまうし、失敗だってするただの人間です。私にだっていろんな面があるのだというのを皆さんにはちゃんと知っておいてもらいたい」


学校とかでは割と『完璧超人』と周囲から思われて、中にはそれで反発を受けてたりもするから、『自分の本当の姿』を知ってくれてる人がいてほしいというのもあるらしい。


好きな人の前では冷静でいられなくなる、可愛らしい女の子としての一面もあるということを。


その『好きな相手』というのが小学六年生ということについても、僕たちはバカにするつもりはまったくない。彼女がいかに真剣に大希ひろきくんのことを好きなのかが分かっているし。


世の中には、そういう『真剣な想い』をバカにしてからかったりする人がいるけど、どうしてそんなことをするのかが僕にはまったく分からない。


自分はそうやってバカにされたらいい気がしないはずなのに他人にはやっていいなんて、身勝手にも程があると思うんだ。



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