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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十九 結人編 「全部壊れてしまうことだって」

十二月二十五日。火曜日。晴れ。



昨日のうちでのクリスマスパーティーは、鷲崎わしざきさんの持ってきた小さなショートケーキと、僕が仕事の帰りに買ってきたお寿司でささやかに行った。


沙奈子は山仁やまひとさんの家でみんなで楽しんだって。


僕はこの感じでいい。十分楽しい。僕と、沙奈子と、ビデオ通話の向こうの絵里奈と玲那と、鷲崎さんと結人くん。


これで十分なんだ。


結人くんの雰囲気が変わったからといって、いきなり馴れ馴れしくしたりもしない。これまでと同じように。


僕たちは、結人くんをただ結人くんとして受け入れてるだけだから。僕たちにとって都合の良い脇役と思ってるわけじゃないから。


彼には彼のペースがある。それを認めてくれる他人もこの世にはいるんだということを彼には実感してもらわないといけない。


彼自身が、自分の中の<闇>と向かい合うために。


僕や沙奈子や絵里奈や玲那や千早ちはやちゃんや波多野さんや田上たのうえさんや山仁やまひとさんがしてることを、実地で学んでもらわなくちゃいけない。


自分のことを受け入れてくれる人たちを悲しませたり苦しめたり傷付けたりしたくないならどうしなくちゃいけないかって、彼には自分で気付いてもらわなくちゃいけない。


そのためにも、自分が今いるこの場所が心地好いものだって、それが当たり前にあるんだってことを体の芯まで彼には実感してもらわなくちゃ。


だから余計なことはしない。あまり馴れ馴れしくされるのが好きじゃないのは僕も同じだから、彼に対しても必要以上に馴れ馴れしくしないようにしなくちゃね。




そういうわけで、プレゼントの交換も敢えてしなかった。彼がプレゼントを用意できないことは分かってたから、逆に僕たちの方から一方的に送ることもしない。


理解できないかもしれないけど、世の中にはそういうのが負担になる人間だっているんだ。それを理解してるからこそ、彼に強いたりしたくないんだ。


彼にとっては嫌なことしかなかったかもしれないこの世の中にも、そうじゃない一面があるってことをこれからも知ってもらいたい。


沙奈子や玲那はそれを知ることができた。今度は結人くんの番だ。


今はまだ半信半疑な部分があるのは分かってる。僕もそうだった。沙奈子と打ち解けられて、絵里奈や玲那と打ち解けられて、山仁さんたちと親しくなれて、それでもまだ僕は心のどこかで疑ってた。


『これのなにもかもが全部、僕を騙すために用意されたドッキリなんじゃないか』


って。


そんなわけないのは頭では分かってても、無意識のレベルでどこか疑ってしまってるのは……、


……いや、今はもう疑ってはないのか……。


そうじゃなくて、何か大きな災害でも起きて全部壊れてしまうことだってあるかもしれないって思ってる感じかな。


もしかしたらそういうことも起こってしまうかもしれないけど、少なくとも彼を騙そうとしてるわけじゃないっていうのが実感できるには、まだまだ時間が必要なんだろうな。



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