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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十八 結人編 「いきなり素直になるのなんて」

十二月二十四日。月曜日。晴れ。




クリスマスイブ。今日は山仁やまひとさんの家でクリスマスパーティーをするそうだ。


でも僕は正直、仕事が忙しくてそれどころじゃなかった。あまり残業が長引かないように集中するのがやっとって感じかもしれない。


だから、仕事が終わって沙奈子と一緒に部屋に戻ってから、ささやかなそれをするつもりだった。


でもそこに、


「一緒にクリスマスパーティーをしてもいいですか?」


という鷲崎わしざきさんのメッセージが。


「はい。いいですよ」


鷲崎さんと結人ゆうとくんが加わるくらいならきっと大丈夫だと思って、OKした。


すると、アパートに帰った時、鷲崎さんと結人くんが部屋の前で待ってた。と言っても、玲那と連絡を取り合ってて、僕と沙奈子が帰ってくるのが分かってたからそれに合わせてだけどね。


結人くんは相変わらず何も言わずに立ってるだけだった。でも、そこから受ける印象は以前とはすっかり変わってるのを改めて感じる、


「この間は、本当にすいませんでした」


部屋に上がるなり、鷲崎さんは畳に手を付いて頭を下げてきた。


だけど僕は彼女のそんな姿を見たいわけじゃないし、謝罪ならもう十分に受けてたから、


「鷲崎さん。もういいんですよ。僕も沙奈子も気にしてません」


と声を掛けさせてもらう。


それと同時に結人くんの様子も見てた。


彼としては、すごく鷲崎さんのことを気にしてるのが分かる。彼女がこうやって頭を下げてるのに自分は何もしないでいいんだろうか?って感じてるのも伝わってきた。所在無げに視線を泳がせる。


今日までにも、結人くんの口からは謝罪の言葉はなかった。なかったけど、僕にはもう必要ないんだ。


彼が申し訳ないと思ってるのはちゃんと伝わってきてるし。


一朝一夕に人間は変わらない。大人に対して頭を下げずに来た彼にとって、僕に対してそうするのは並大抵のことじゃないんだろうな。


だからそれはいいんだ。


修学旅行の時に、つい沙奈子を突き飛ばしてしまったことについては彼の口から直接、謝罪の言葉をもらってるとは聞いてるし、彼はよくないことをしたと思えばそれを反省できる子だっていうのはもう分かってるから。


僕にとって重要なのは、僕に対して頭を下げてもらうことじゃない。彼に、自分のしたことを良く考えて、今後、鷲崎さんを悲しませないようにするにはどうすればいいのかを知ってもらえればそれで十分なんだよ。


そして彼には、それを理解できる頭があると思うんだ。


彼は決して頭は悪くない。だけど悪くないからこそいろいろ考えてしまうんだろうと思う。彼の昔の境遇を思うと、これまで自分がとってきた態度を思うと、いきなり素直になるのなんて現実的じゃないよね。



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