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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十六 結人編 「活き活きしてるなあ」

十二月二十二日。土曜日。曇り時々雨。




沙奈子の冬休み初日。土曜日だから当然、絵里奈と玲那に会いに行く。


今日は、いつもの人形ギャラリーとは違う、また別の人形作家さんの個展っていうことだった。


桃弥とうやっていう、最近メキメキと人気を獲得しつつある作家さんなんです」


絵里奈が説明してくれるけど、正直、僕にとってはピンとこない。


だけど絵里奈と沙奈子が喜んでくれるのなら、反対する理由は僕にはなかった。


「やっぱり、山下典膳やまもとてんぜんさんのとも、神玖羅かみくらさんのとも、何か違いますね。まあ、神玖羅さんのは特に強烈ですけど」


「ああ、あの怖い人形作る人ね。私の兵長も大概怖い感じだけど、神玖羅さんの人形はもはやホラーだと思う。正直、昔の自分を見てるみたいで不安になることもあるんだよね」


絵里奈と玲那のやり取りを聞いてると、割と自分の姿とかに当て嵌めて説明してたりするから、そういう意味じゃ分かりやすくて助かるかな。


確かに、神玖羅っていう人形作家さんのそれは、玲那のところの『兵長』とは別方向で怖い人形っていう印象があった。特に、目が怖いんだ。この世の全てを呪っているかのようなって感じの。


それがもし、昔の玲那に似ているんだとしたら、あれがそうなのかと胸が痛くなる気もする。


だけど今から思えば、結人ゆうとくんの目付きにも似ていたのかな。


そんな人形を作れる神玖羅っていう作家さんも、もしかしたら苦しい人生を送ってきたんだろうかって思ってしまう。


実際にどうだったかは僕にはもちろん分からない。分からないけど、神玖羅さんの人形には、怖いけど何とも言えない親近感も覚えなくもないな。


でも、今回見に来た、桃弥っていう作家さんの人形は、どちらかと言えば神秘的って感じなのか?。


山下典膳って作家さんのは、こう、あったかくてすごく人間味があるっていう感じだから、それとはまた違う雰囲気を持った人形だっていうのだけは、何となく感じ取れた気もする。


とは言え、やっぱりよく分からないから、夢中になって見入ってる絵里奈と沙奈子の後を、玲那と一緒について回る状態だった。


「なんか、活き活きしてるなあ、二人とも」


スマホに繋いだイヤホンから玲那の『声』が聞こえてくる。


アプリのバージョンが進むたびにその『声』は自然なものに近付いていってた。僕自身が聞き慣れたからっていうのもあってか、もうほとんど違和感を覚えない。普通に玲那がしゃべってるようにも思えた。


ただ、玲那の口は動いてなくて、彼女の手がせわしなくスマホを操作してるから、そこで彼女の本当の声じゃないんだなって思わされるんだけどね。



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