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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十五 結人編 「僕たちの役目なんだろうな」

十二月二十一日。金曜日。曇りのち雨。




今日は沙奈子の学校の終業式。明日からは冬休みだ。


小学生最後の冬休みだと思うと、少し感慨深いものもあるかな。


それはそれとして、あの日以来、結人ゆうとくんの様子がすっかり変わったと、改めて思う。


一緒に食事をしてても、さすがに僕たちと話をするわけじゃないけど、以前と同じように憮然とした態度をとろうとしてるんだろうけど、それがいまいち板についてない気がするんだ。


ただただ照れ隠しでそんなふりをしてるだけにしか見えなくなってきたって言うか。


愛想良くできないのは、無理もないと思う。今まで散々突っ張ってきたのに、急に『いい子』になるなんてできないよね。


でも、それでいい。


僕だって会社でもっとみんなに愛想良くして打ち解けられたらいいけど、やっぱりそういうのは僕にはできないし。自分にできないことを彼にさせようと思うのはおかしい気がする。


それに、今でも十分、彼はいい子だよ。沙奈子が作る料理を黙々と勢いよく食べてくれるんだから。その姿が何より、料理を美味しいと思ってくれてると雄弁に語ってくれてるし。


ただ、相変わらず野菜は食べようとしないのはちょっと残念だけどね。


けど、そのくらいは可愛いものかもしれない。


これで結人くんのことも、万事解決とはいかないにしても、ようやくスタートラインには立てた気がするから、これからも彼にとっての生き方のヒントになるような大人でありたいと思うかな。


「本当に良かった……。結人くんもやっと救われたんですね……」


夕食が終わって鷲崎わしざきさんと結人くんが自分の部屋に帰った後、絵里奈がしみじみとそう言った。玲那のことをずっと見続けてきた彼女だからこその感慨だと思う。


それを裏付けるように、


「私、ずっと不安だったんです。このままだと、彼も玲那と同じになるんじゃないかって……。


玲那は社会人になってから、私や香保理と出逢って変わっていきました。だけどそれでもあんな事件になってしまった……。


結人くんには鷲崎さんがいたけど、それだけじゃまだ十分じゃなかったんでしょうね。でも、玲那が私や香保理と出逢うよりもずっと早く、沙奈子ちゃんやいたるさん、大希ひろきくんや千早ちはやちゃんに出逢うことができた。


これでもうきっと大丈夫って気がするんです」


って。


それは、僕の実感でもあった。だから言えたんだ。


「そうだね。生い立ちがどんなに不幸でも、それだけで人生が決まってしまうわけじゃないってことを僕たちはもう知ってる。それを彼にも理解してもらえるようにするのが、僕たちの役目なんだろうな」



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