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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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九百十四 結人編 「僕にできないことが」

十二月二十日。木曜日。曇りのち雨。




『お騒がせしてすみませんでした』


僕がそうやって喜緑きみどりさんや秋嶋あきしまさんたちに向かって頭を下げた後、鷲崎わしざきさんも、


「すいません、本当にすいません…!」


って何度も頭を下げてた。それは、彼女の本心だったと思う。


それから絵里奈と玲那にも事情を話して、玲那から喜緑さんや秋嶋さんたちにフォローしておいてもらうようにもお願いしておいた。


結人くんの口からは、結局、『ごめんなさい』って言葉が出てきてなかったからね。


僕としては彼のあの姿さえ見られたら言葉としての謝罪は必要なかったけど、きみどり)さんや秋嶋あきしまさんたちには伝わったかどうか分からないし。


すると案の定、


「とっくんやアッキーたちは、結人くんが謝ってないってことで納得できないみたいだね~。


その辺、とっくんたちは言葉で『ごめんなさい』ってちゃんと言わなきゃダメって教わってきてるだろうから、仕方ないかな。


でも、今回のことは私に免じて勘弁してって言ったから、たぶん大丈夫だよ」


とのことだった。


玲那の言う通りだと思う。普通は、ちゃんと『ごめんなさい』って言うのが当たり前って教わってきてるだろうから、それを言わなかった結人くんに対して反感を覚えてしまうこと自体は無理もないんだろうな。


でも、そこは玲那が間に入ってくれることで取りなしてもらえると思う。


たぶん、僕が言っても素直には聞いてもらえないけど、玲那が言う分には聞いてもらえるんだ。


僕と秋嶋さんたちとの間んはしっかりとした信頼関係ができてないものの、玲那との間には強い信頼関係が築かれているから。


この辺りも、誰とでも同じように信頼関係が築けるなんてありえないと思うから、気にしてない。


誰とでも同じ強い信頼関係が築けるなんて話は嘘臭いという実感しかないし。


だけどそれでいいと思うんだ。


秋嶋さんたちと信頼関係を築くという、僕にできないことが玲那にはできる。


逆に、結人くんとの間にある種の信頼関係を築くという、秋嶋さんたちんはできないことが僕にはできた。


それぞれできることが違うからいいんじゃないかな。




今日は、鷲崎わしざきさんが個人懇談で学校に行ってる。仕事が一段落して、結人くんの心の鎧がほんの少しだけほぐれたこともあって、晴れ晴れとした気分で行けるって、昨日言ってた。


これまではずっと、結人くんのことであれこれ言われるから気乗りしなかったらしいけどね。


中学に上がる前にこうなれたことに、本当にホッとしてるらしい。


だから個人懇談にも気楽に臨めたらしいんだ。



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